ブルース・スプリングスティーンが、“NO KINGS”と反トランプを掲げた「Land Of Hope And Dreams」ツアーを、3月31日にミネアポリスでスタートさせた。
その冒頭のメッセージは極めて強烈で、オープニングの2曲とともに現地から無料で生配信された。現在もアーカイブで視聴できる。
https://www.youtube.com/live/2EN2kOjTx_Q?si=wGiiO_6bZGHbz9MO
ボスが語ったのは以下の通りだ。
「皆さん、ようこそ。ミネソタ州セントポール、『Land Of Hope And Dreams』アメリカンツアーへ。まず今夜は、海外で任務に就いている兵士たちのために祈りを捧げたい。彼らが無事に帰還することを祈ります。
今夜ここにいるのは、危険な時代において、アートの正しき力、音楽の力、そしてロックンロールの力を呼び起こすためだ。偉大なるEストリート・バンドとともに。
俺たちはここに、アメリカの理想――民主主義、憲法、そしてこの国が掲げてきた神聖な約束を祝福し、守るために立っている。
俺が愛してきたアメリカ、50年にわたって歌ってきた、世界にとって希望と自由の灯だったあのアメリカは、今や腐敗し、無能で、人種差別的で、無謀で、国家を裏切るような政権の手に握られている。
だから今夜、みんなに呼びかけたい。恐怖ではなく希望を。権威主義ではなく民主主義を。無法ではなく法の支配を。際限のない腐敗ではなく倫理を。無関心ではなく抵抗を。分断ではなく団結を。そして戦争ではなく平和を選ぼう」
この言葉の直後、1曲目としてエドウィン・スターによるプロテストソング“War”のカバーが始まる。続いて、“Born in the U.S.A.が演奏された。「アメリカで生まれた」というタイトルを持つこの曲だが、トランプがいわゆる「出生地主義(アメリカで生まれれば原則市民権が与えられる)」を制限・廃止する考えを繰り返し示してきたことに対し、ACLU(米自由人権教会)が、「憲法(特に修正第14条)に反する」として訴訟を提起。ちょうどこの週から米最高裁で審理が開始されている。
この曲が、ACLUのキャンペーンで使用されているというタイミングでもある。
しかしこれに対し、大統領が、自らのソーシャルメディアで、スプリングスティーンを「完全に負け犬」と攻撃。以下のように投稿した。
「ひどく退屈で、まるで出来の悪い整形外科医にめちゃくちゃにされたかのような、しわしわのプルーンみたいな見た目のブルース・スプリングスティーンは、長年にわたって深刻で治らない“トランプ錯乱症候群(TDS)”にかかっている。
あいつは完全に負け犬で、圧勝した大統領に対して憎悪をまき散らしている。私は、得票でも勝ち、7つすべての激戦州を制し、全米の86%の郡で勝利したんだ。スリーピー・ジョー(ジョー・バイデン)と民主党の下では、この国は死んでいた。でも今や、世界のどこよりも熱い国になっている。MAGAは、あんな高くてつまらないコンサートはボイコットすべきだ。汗水たらして稼いだ金を無駄にするな。アメリカは戻ってきた! 大統領DJT」
戦争の最中に、もっと重要なことがあるはずだろう……という状況で、このような投稿をしていることに、げんなりさせられる。
この日の会場がミネアポリスだったこともあり、アンコールでプリンスの“パープルレイン”もカバー。
さらに今回のツアーにはトム・モレロも参加しており、ボスのすぐ隣でギターを弾いている。
スプリンスティーンはツアー直前、反トランプを掲げたプロテスト“NO KINGS”にも参加。ミネソタ州セント・ポールで行われた集会でも、強烈なメッセージを発している。
「今夜は、美しい夜になろうとしている。
この冬、連邦部隊はミネアポリスの街に死と恐怖をもたらした。だが、彼らは相手を間違えた。この街を、このミネソタという土地を。
ミネアポリスの人々、ミネソタの人々が示した力と連帯は、全米にとってのインスピレーションだった。あなたたちの強さと覚悟は、ここがまだアメリカであることを俺たちに思い出させてくれた。
この反動的な悪夢も、アメリカの都市への侵略も、決して許されはしない。
あなたたちは希望を与えてくれた。勇気を与えてくれた。
そして命を落とした人々のために——
3人の子どもの母親、レネー・グッド。残酷に殺された。
退役軍人病院の看護師、アレックス・プレッティ。ICEによって処刑され、背後から撃たれ、路上に放置された。無法な政府は、その死すらまともに調査しようとしなかった。
彼らの勇気も、犠牲も、その名前も、決して忘れられることはない」
また、ミネソタ・スター・トリビューン紙では、率直に反トランプ的な発言を続けることで、一部の観客を失ったり、距離を置かれたりすることを心配しているのか?と訊かれ、 「全部受けて立つ覚悟はできている」と答えている。
「今回のツアーは、かなり政治的なものになるし、いまこの国で起きていることに真正面から向き合う内容になる。ミネアポリスとセントポールから始めたいと思った。そして最後はワシントンで終えたかったんだ」「Eストリート・バンドは、困難な時代のためにあるバンドなんだ。最初からずっとそうだった。こういう瞬間こそ、俺たちがコミュニティにとって本当に意味のある存在になれる時だと思う。バンドに目的を与えてくれるのも、まさにこういう時なんだ。だからセットリストも、その思いを軸に組み立てている」
率直に反トランプ的な発言を続けることで、ファンを失うことも、「気にしていない」と答えている。
「俺の仕事はすごくシンプルなんだ。やりたいことをやる、言いたいことを言う。あとは、それについて人が好きに言えばいい。それが俺のルールだし、それでいいと思ってる。観客の一部を失うかもしれない、なんてことは気にしたことはない。自分たちが文化の中でどんな立ち位置にいるのか、ずっと感じてきたし、そのバンドのあり方に今も強くコミットしている。
反発があるのは当然だよ。それも含めてのものだし、全部受けて立つ覚悟はできている」。
https://www.startribune.com/bruce-springsteen-streets-of-minneapolis-first-avenue-no-kings-rally-tom-morello-max-weinberg/601632600
スプリングスティーンとEストリート・バンドは、ツアー開始前に、次の声明も発表している。
「ミネアポリス、ポートランド、ロサンゼルス、サンフランシスコ、フェニックス、ニューアーク、サンライズ(フロリダ)、オースティン、シカゴ、アトランタ、ベルモント、ロングアイランド、フィラデルフィア、ニューヨーク、ブルックリン、ピッツバーグ、クリーブランド、ボストン、そしてワシントンD.C.へ――
E ストリート・バンドが向かう。
俺たちは届けにいく。
恐怖ではなく希望を。
権威主義ではなく民主主義を。
無法ではなく法の支配を。
歯止めなき腐敗ではなく倫理を。
分断ではなく結束を。
そして、戦争ではなく平和を」
スプングスティーンが、ICEによって射殺されたレニー・グッドとアレックス・プレッティのために書いた曲“Streets Of Minneapolis”はこちら。
スプリングスティーンはこれまでにも数々の伝説的なライブを行なってきたが、このツアーもまた歴史に刻まれるものになるのは間違いない。ツアーは5月27日、ワシントンD.C.で幕を閉じる予定だ。