2008年にシングル“L.E.S.アーティスツ”とアルバム『サントゴールド』とで世界的な現象とまでになったサンティゴールドだが、いよいよ新作の制作に仕上げにかかっていて、秋のリリースを見据えているという。
タイトルは未定だというこの新作にはヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oやニック・ジナー、あるいはTV On The Radioのデイヴ・シーテックら客演しているというが、アルバムのテーマは基本的に孤独についてのものだとサンティゴールドはスピン誌に語っている。
「わたしが書くリリックってたいがい自分が個人的に経験していることについてものになることが多いんだけど、今回はすごくひとりぼっちになったような気がしたのね。前回は作曲のパートナーがいろいろいたわけ。でも、今回はわたしだけだった。で、それが結構しんどかったのね」
2年間続いたツアーを終えてようやく2010年に新作の作業に取りかかった時、完全に憔悴しきっていて、さらにまだなにも書けていない状態だったとサンティゴールドことサンティ・ホワイトは語っている。そもそも自分の創作のインスピレーションがどこから来ているのか、それを思い出さなければならなくなったのに誰の助けも借りられなかったのがしんどかったのだと説明している。「『そもそもわたしって作曲がうまいの?』って思った時に『うまいよ!』って言ってくれる人もいなかったわけ」。
そうした意味で書いた“Gods Out of Machine”はもともと「デウス・エクス・マキナ」というギリシャ悲劇の用語をタイトルに持ってきていて、これは事態が収拾不可能になった時、超越的な力が働いて事件が落着するという意味なのだが、歌の内容はむしろ自己暗示にも近い自分激励ソングだったとか。コーラスは「ひとりっきりでも成せば成る!」というもので、これを書き上げるのに3か月かかったという。最初の頃は「ちょっとこれはないかなあ」と自分でも思っていたそうだが、「そのうち、最もクリエイティヴな部類の歌詞じゃないけど、今必要な歌詞であるのは確かね」と思えるようになったそうだ。
あるいは“Free Like Me”という曲は自分自身をそのまま受け入れていく曲で、リアリティ番組などであまりにも多くの人が整形などを考えているのを見て閃いた曲だとか。「みんな整形をやりたがっていて、男の人の関心を買おうとしてるわけ。でも、わたしたちって本当はみんなそれぞれにフリークなのに。わたしは自分のスタイルや自分の好みというところで、自分がメインストリームだと感じたことがないから、みんなフリークなんだということを歌ってみたくなったわけ」。
その一方で“The Riot's Gone”は自身の父が亡くなったことで自分のなかでため込んでいた怒りを外に吐き出す作品で、そのために壮大なサウンドを構築したという。たとえば、サンティ自身で録ったコーラスにさらに自分のボーカルを重ねるなど、かなり層の厚い音を作り上げ、「ピーター・ガブリエルの大作のようにちょっと野心的な音になっている」とか。なお、ザ・バード・アンド・ザ・ビーのグレッグ・カースティンもこの曲では参加しているとか。
“This Isn't Our Parade”はギターにヤー・ヤー・ヤーズのニックをギターに迎えていて、カレンが参加するのもおそらくこの曲。「これは破綻をきたさずにはいられない関係を描いた悲しい曲なの。なんかしらの理由で、ある人にはどうして自分の真意が伝わらないというもので、なにも起きないんだということを受け入れていくしかないという曲ね」。
なお、サンティは今年に入ってからジェイ・Zのロック・ネイションとマネジメント契約していて、ジェイ・Z自身今回の新曲群について「大作だし、重要だ」とお墨付きをもらったそう。サンティはヨーロッパ・ツアーを7月から始める予定で、それまでには新作の作業も終わらせるという。