【インタビュー】愛なんてクソくらえ!と愛の轟音を暴発させる進化作『Luv Sux Sessions』完成! 新体制Survive Said The Prophetが語る「今」と「未来」

【インタビュー】愛なんてクソくらえ!と愛の轟音を暴発させる進化作『Luv Sux Sessions』完成! 新体制Survive Said The Prophetが語る「今」と「未来」
ラウド/オルタナ/メタルコアといったジャンルの枠組みをその創造性で鮮やかに超越しながら、ロックとバンドのさらなる可能性を開拓し続けるSurvive Said The Prophet。前作『Hateful Failures』以来約3年ぶりとなるニューアルバム『Luv Sux Sessions』は、「Love Sux(愛なんてクソくらえ)」と「Love Successions」を重ね合わせたタイトルの通り、愛ゆえに悩み傷つきながら、それでも愛を糧に今を生きる生命すべてを祝福するような、壮絶で痛快な進化作だ。アルバム発売を目前にして直面したIvan(G)脱退という転機も乗り越え、9月から始まったツアーでは圧巻のシンガロングと響き合いながらバンドの可能性を刷新し続けているサバプロ。実は『Hateful Failures』(=憎しみの過ち)とも対になっているという今作について、Yosh、Tatsuya、Showの3人にじっくり語ってもらった。

インタビュー=高橋智樹


愛にはプラスとマイナスのパワーがあるから前に進めるだけで、両方とも苦しいし、幸せっていうものはないかもしれないねって(Yosh)

──初回生産限定盤にパッケージされているドキュメンタリー映像では、当初シングルかEPを想定していたという話も出てましたけども。よくぞアルバムとして作り上げてくれた!という手応えのある作品になりましたね。

Yosh(Vo) いやあ、まさかアルバムになるかあ、っていうのもありましたけどね、振り返ってみると(笑)。だけど、このタイミングを逃すとたぶん、全体的なモチベーションにも関わってくるなっていう。もう7枚目なんでね──ベスト盤(リテイクベストアルバム『To Redefine / To Be Defined』/2021年)を入れると8枚目ですけど──そういうポイントが見えてきちゃったりするんですよね。でも今回、みんなのモチベーションが上がる局面だったっていう意味では、完璧なタイミングだったんですよね。

Tatsuya(G) 最初はシングルとかEPから始めようってなって、Yoshのスイッチが入って、みんなが上昇気流に乗っていって。で、どんどん曲を集めてみたら──よりどりみどりではあるんですけど、最後「アルバムにしよう」ってYoshが進めていった時から、一貫したテーマみたいなものがそこに出てきて、始まりから終わりまでストーリーラインが生まれてきて。今回のアルバムの、自分なりの愛の形──この10曲が自分の中でどういう立ち位置の曲なのか、っていうのが細分化された結果のアルバムなのかなって思いますね。

Show(Dr) 前作アルバムが『Hateful Failures(憎しみの過ち)』で。今回は「Successions」、成功の意味で。繋がってるんですよね、『Hateful Failures』と『Luv Sux Sessions』は。同じ対象に対して、愛になったり、憎しみになったりするっていうことを一から考える機会って、人生であんまりないと思うんですよね。で、今回はYoshが「愛の成功っていうタイトルを考えた」っていう話を聞いて……愛って抽象的な言葉で、どこからが愛でとか、恋でとか、人それぞれすぎて形にできないものでもあって。「好きだよ」って言うだけが愛じゃない、っていうのはすごく考えさせられましたね。「さよなら」とか「ありがとう」とか、ひとつの挨拶から愛があふれたりするっていうのが、曲ごとに対比されてるっていうか。めっちゃキレてる曲もあるし──。

Tatsuya めちゃめちゃある(笑)。

Show めっちゃキレてるのもひとつの愛なんですよ。

Tatsuya 感情がないのと違うから。

Show 「こんなに愛してるのに、おまえなんなんだよ!」みたいな気持ちもあるし、「離れ離れになるけど、おまえのことを想ってるよ」とか……いろんな気持ちがひとつのアルバムになって『Luv Sux Sessions』っていうものになったんじゃないかなと。

──単に「愛の成功」を歌うのではなくて、「Love Sux」=「愛なんてクソくらえ」も含めて「それでも愛なんだよ」って提示している強さがありますよね。

Yosh 僕的に、人間が始まった時、愛が先に来たのか、憎しみが先に来たのかっていうのが──僕たちも7枚8枚アルバムを出して、上っ面なものは書いていけないなって。今まで答えを出せなかったことに対して、答えを出さなきゃいけないってなって。そういう部分が、前作から今作に繋がって出ていて。実は、『Hateful Failures』の終わりから聴くと、今回のアルバムの最初の“Love Sux”に繋がっていて。で、“EMOTIONALDISTRACTION”の最後の転調が、『Hateful Failures』の頭のキーに繋がって……っていう形になっていて。LoveもHateも、人間がこういうふうに回していくんだよって。だけど、あえて『Love Successions』っていう普通のスペルにしなかった理由は、「愛なんてクソくらえ」っていう──愛っていうのは人間が作り出したファンタジーであって、プラスとマイナスのパワーがあるから前に進めるだけで、両方とも苦しいし、幸せっていうものはないかもしれないねって。愛っていうものは神と同じで、知るべきものではないと。でも、そのプラスとマイナスが、先に進ませる力なんだよっていう。僕らはラウドっていう力を持っているからこそ、「ファック・ラブ!」みたいなものができあがったんじゃないかなって。それをすごく誇りに思ってて、みんなでそれを理解し合えた。そこまでの人生を、俺たちみんなで歩んできたっていう証が、このアルバムに残ってる。だからもう、これでもう一回売れてえなあっていう(笑)。愛をもう一回表現して、武道館とかウェンブリー・スタジアムとか、今まで言ってきたゴールを達成できたらいいな、もういい加減に見てえなあって(笑)。そういうところにいると思ってるんですよね。

──どの曲の先にも、壮大な風景が見えてきますよね。“Confession”の《We are the lost and hopeless》のコーラスパートが、《lost and hopeless》と歌いながらでっかい希望になっていく図まで浮かんでくるし。

Yosh そうなんです、まさに。作ってる時に、その上にメロディを乗っけようか?みたいなことをみんなで話してたんですけど。たまたまCrunchyrollっていう海外のサブスクのチームが来てて、友達だったんでスタジオまで来てくれて、ギャングボーカルを録らせてもらった時に、「これ、俺が入るところじゃないな」って思って。「人数が増えたらもっといいし、俺が歌わないのは人数を増やすためだよな」って。

Tatsuya 音を止めてもいいよね。

Yosh そうそうそう。なんなら止めようか?みたいな提案もメンバーから出てきたりとか。楽しみですね。

このバンド名をいつも思い出して、また立ち上がってきたような気がしてるんですよ。サバイブしてる感じがしていいですね。つらいですけど(笑)(Show)

──さっきも触れたドキュメンタリーで、今作に至る3年間を「The Silent」と呼んでいたのが印象的でした。体制とか枠組みが変わるだけでなく、内面的にも大変な時間だったんじゃないかとも思うんですけども?

Yosh ……俺はもう、大変な記憶しかない(笑)。

Show でも、毎回じゃない? いっつも終わりギリギリみたいな感じなんで(笑)。

Tatsuya 切羽詰まってる感じ。

Show 今回に限ってっていうことではないですけど……アルバムを数多く出していくことって、作曲者もそうだし、俺たち演奏者もそうですけど、プレッシャーやら、形をしっかり作らなきゃいけないっていう重みが増えてはいくので。曲と向き合いたくない時間っていうものが絶対にあるから。それを、0から1を作る人間に言われたら、もうしょうがないし。もし仮に「終わりたい」って言われるんだったら「そうだよな」っていう時間もあったし。でもやっぱり、なんだかんだいつも思うのは、このバンド名にすごく助けられていて。直訳すると「生きろと預言者は言った」っていう──このバンド名をいつも思い出して、また立ち上がってきたような気がしてるんですよ。それがすごく、生きてる感じ、サバイブしてる感じがしていいですね。つらいですけど(笑)。

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Yosh やめられないバンド名をつけてしまったよね(笑)。

Tatsuya いつも寒い季節にそういう話してるよね(笑)。

Show 本当にしんどいから離れてしまおうか、みたいな時も、このバンド名が助けてくれるというか。このバンド自体にすごく愛を感じる。それが好きですね、このバンドは。

Yosh 作ってる側の視点で言うと、正直にならなきゃいけない部分と、ファンタジーじゃないですけど「人のために作り上げなきゃいけない部分」が矛盾してるところが、作品を出せば出すほど「大丈夫かな?」って──「この人生を歩んでいけるのかな?」って思って、結構行ったり来たりするんですよね。でも、これはたぶん、みんな肩を並べて言えることなんですけど、ライブをした瞬間にどうでもよくなるんです(笑)。何時間もかけて話すよりも、ライブ一発で「おまえ、こういうことを言いたいのね」っていうのが、各々の楽器からわかるんですよね。会話にしてしまったら聞けないワードってあるじゃないですか、変に反応してしまうワードって。それが音楽にはないんですよね。それって、捨ててしまったら返ってこない貯金というか。諦めてしまったら、あの時を思い出すのもつらいし、音楽っていうものは二度とあの形では出てこないし。今まで積み上げてきたすべてが、自分の過ちになってしまう──っていうところが、ポイントとしてだんだんポジティブに見えるようになってきたのかなって。「諦めなければ、こんなに素晴らしい音楽が待っている」っていう部分が、バランスよく見えるようになってきたんで。今がいちばん楽しいですね。それはみんなの口からも出てきてるし。みんなの音のディテールももっと聴こえるようになったというか。音楽の「苦」のほうをずっと話しましたけど、それが本当にどうでもよくなった人生、これを待ってたんだなって。そんなちっぽけなことで悩むよりは、もっと大きなものを見てなきゃいけないっていう。その楽しみに向き合えるこの人生を、喜びと呼ぶんだな──みたいなポイントに立っている感じですね。

──それはバンドの未来にとっても大切なことですよね。

Yosh そうですね。まあでも、これを何回も繰り返してみないと、ここには辿り着かない……っていうことの、ものすごくポジティブな言い方ですよね(笑)。けどそれって、『ROCKIN'ON JAPAN』を読んでもらってる人たちには言いたいけど──Love Suxっていう会話をした時って、ポジティブに見えないものばっかりだけど、仕事であろうと習い事であろうと、自分が目指しているゴールであろうと、本当に階段さえ上っていれば見えるんですよ、希望は。それを信じてほしいなって。前に進んでるから明日が見えるんだよって。明日に向かわなくなった瞬間に、僕たちは終わりだよって。

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