ポップ・ミュージックはここ50年で物悲しい音へと変化してきたと最新研究結果が語る

ポップ・ミュージックはここ50年で物悲しい音へと変化してきたと最新研究結果が語る

ポップ・ミュージックはここ50年の間により憂鬱なものへと変化していると新しい科学的な研究が結論づけている。

研究は『美学、想像性と芸術の心理学』誌に掲載されたもので問題の論文は、音楽は50年前と較べてよりラウドに、より退屈になり、曲調はより悲しみや憂いをたたえるものになっているという結論を導いている。

研究を行ったグレン・シュレンバーグとクリスチャン・ヴォン・シェーヴは、1965年から2009年の間に『ビルボード』誌の年間トップ40から選んだ最も人気の高い1010曲を選び出し、そのテンポと諧調を分析したという。ふたりによれば、陽気な作品はえてしてテンポは速く、キーもメジャーであるのに対して、悲しげな作品はテンポは遅く、キーもマイナーになりがちだとのことだ。

そしてふたりの分析によると、ここ50年でマイナーの曲は倍に増えていて、テンポの遅い曲も90年代をピークにして全体的に増加傾向にあるという。さらには陽気でアップテンポの曲が著しく減っている一方で、ムードのはっきりしない曲が増えていて、また曲そのものが長くなり、女性による作品も増加傾向にあるという。

ふたりは次のように述べている。「わたしたちは、音楽が相当に物悲しい音へと変化して、感情的には曖昧なものへと変化しているという推察のもと、アメリカのポピュラー・ミュージックが時代とともにその感情的な基調がどう変化してきたのかどうかを検証した。調査の題材としてきたのは、過去50年間のうち25年分のトップ40曲となった1000曲以上に及ぶ楽曲になる」。

「長年にわたってポピュラー・レコーディングはその長さが引き伸ばされ、女性アーティストの占める割合も増えてきた。わたしたちの主な仮説と呼応するように、マイナー・キーの使用の増加と平均的な曲のテンポは減速していて、ポピュラー・ミュージックが時間とともにより悲しげな音のものになってきたことを裏付ける現象となっている。さらにテンポの減速化はマイナー・キーの曲よりもメジャー・キーの楽曲においての方が顕著で、これはポピュラー・ミュージックにおける情緒の曖昧化の進行をさらに際立たせることなった」

シェレンバーグとヴォン・シェーヴはさらにポップ・ミュージックがなぜ悲しげなものへと変化してきたのという背景について、消費主義と文化的多様性の普及を挙げていて「より多くの選択への需要が高まったからだ」としている。さらに消費者は「自身の洗練された趣味性をみせびらかしたがる」ものだとしていて、アバの"恋のウォータールー"のようにあけすけに陽気な曲は「ナイーヴでいささか子供っぽいもの」として時代遅れなものになってしまったとふたりは説いている。

(c) NME.COM / IPC Media 2012
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