元クラフトワークのカール・バルトスが3月14日に10年ぶりの新作『オフ・ザ・レコード』をリリースした。そして、アルバムの楽曲そのものは前作『コミュニケーション』よりもよっぽど古い70年代のものだとカールは明らかにしている。
カールは1975年から90年までクラフトワークのメンバーとして活動したが、今回の収録曲のもととなった作品はその70年代からカールが録音していた「アコースティック・ダイアリー」をもとにしているものだと『ローリング・ストーン』誌に語っている。
こうした音源を作品化していくという思いつきは、カールの隣人のレコード・レーベル経営者から出たアイディアだったというが、そうするとこの膨大な音源を整理しなければならなくなるので最初は気が進まなかったとカールは説明している。
「最初は古いレコーディングを引き渡せば、それをリリースするからという話だったんだけどね、『いや、やっぱりそれはできない……すべてにまずは耳を通してみないと』」と思い直して、本格的な音源の洗い出しにとりかかったとか。
膨大な量の音源や音声メモやアイディアを12トラックの音源までにまとめていくことが最大の試練だったとカールは説明しているが、「こっちから断片をとってきて、あっちからベースラインを引っ張ってきて、それからメロディを探してきて、最終的にはこの時期の音源の完璧な図を描くことに成功したんだよ」と語っている。
なお、ニューヨークやロンドンで過去8枚の作品の全曲ライヴを「回顧展」として行い、同じ趣旨の来日公演を5月に予定しているクラフトワークのここのところの活動についてカールは違和感を隠していない。
「関わっていた人たちをまるで抜きにして回顧イヴェントと銘打つことなんてできるものなのかな? フローリアン(・シュナイダー)はまだ生きてるし、ヴォルフガング(・フリューア)もまた生きてるし、ぼくだってまだ生きてるし、みんなそれぞれにあれらの作品に関わってたんだからね。100年後に行われる回顧イヴェントではぼくたちのことも取り上げられるのは間違いないはずなのにね」