イスラエルやイスラエル支配地域でのアラブ系への差別政策を批判し、ミュージシャンにイスラエルでの音楽活動のボイコットを訴えている元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズだが、ロジャーはやり方を考え直していると、ニュース・サイトの「ハフィントン・ポスト」に明らかにしている。
様々なミュージシャンに送ったはずの「イスラエルでの活動をボイコットしようという手紙」がまったく表面化してきていないことをロジャーは問題だと考えていると語っていて、「ぼくはこの問題全体について注意深く検討していて、細心の注意をもって考えているんだよ。というのは、これをやることの結果、そしてそれに関わる人たちのことを自分のことよりも最重要なこととして考えてるからなんだ」と説明している。
これまでロジャーはイスラエルのアラブ系住民への対応を差別的だとしてかつての南アフリカのアパルトヘイト政策にたとえていて、「イスラエルはとうに暴走しているし、現地まで赴いてヴァイオリンを弾いたところであまり効果はないと思う」と語り、様々なミュージシャンにイスラエルでの活動をボイコットするように訴える手紙を送りつけていたことを先月明らかにしていた。また、昨年末にイスラエル国防省の招きを受けてショーを予定していたスティーヴィー・ワンダーを説得して思いとどまらせたことなども明らかにしている。
ロジャーは、「状況が急転直下して大問題となって、結果的にぼくがやろうとしていることがあまり影響力を持たなくなるような事態は避けたい」として、今現在のやり方を考え直しているところだと明らかにしている。特にロジャーは今月ニューヨークで予定していた自身の公開インタヴューと講演会『ロジャー・ウォーターズとの夕べ』が会場側の都合で一方的に中止に追い込まれたことに危機感を抱いたようで、次のようにも語っている。
「92Y(会場となったテレサ・L・カウフマン・コンサート・ホールの俗称)の講演会を仕切っているスーザン・エンゲルにそこを訊いてもらいたいんだけどね、ぼくの講演会の中止の理由についてなんで誰にも明かそうとしないのかとね。とにかく、何も話してくれないんだよ。何度も何度も何度も訊いたけど、もう諦めたよ」
なお、この会場はユダヤ系の文化団体が運営している施設で、さまざまなユダヤ系団体が会場の運営母体に寄付も行っていて、こうした事情が講演中止に繋がったとされている。
しかし、ロジャーは自身の立場を変えないとしていて、イスラエルの諜報機関の元責任者が6人登場してパレスチナにおける占領政策が間違っていたことを認めたドキュメンタリー作品『The Gatekeepers』を引き合いに出しながらイスラエルによる占領と入植政策が「平和を徹底的に損なう障壁」となっていると語っている。
「もしきみが合理的な人間で、他の人間への思いやりもあると仮定したら、目標はまずパレスチナ難民問題を解決することにあるべきで、占領状態を終わらせ、イスラエルの全市民がまともな生活を送れるように安全と権利を保障されるべきなんだ」