ロジャー・ウォーターズやブライアン・イーノらが活動を行っているBDS (ボイコット・資本引き上げ・制裁運動) の公演中止要請を押し切り、2017年11月にイスラエルのテルアビブで公演を行ったニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズだが、ニック・ケイヴがイーノに公開書簡を送り、イスラエルの文化的なボイコット運動は「臆病で恥ずべきもの」だと主張していることが分かった。
昨年11月、ニック・ケイヴはBDSに対し「ミュージシャンたちを休業させて脅し、検閲して黙らせようとしている」として、BDSに「立ち向かう」と発言。その主張に対して、ロジャー・ウォーターズがニックに反論の意を示す声明を発表していた。
「Pitchfork」によると、ニックは自身のウェブサイト「Red Hand Files」にイーノに宛てた書簡を公開し、以下のように綴っているとのことだ。
私は現イスラエル政府を支持していないし、同国で公演を行うという決断が、政府の政策に対する暗黙の支持であるとは思われたくない。また、あなたが挙げていたイスラエルの残虐行為を許しもしなければ、そういった事実に関して無知でもない。
「Hoping Foundation」を通してパレスチナのために多くの活動をしてきたし、パレスチナの子ども達のために15万ポンドを献金している。だから、ある意味で私はイスラエルと対極の位置にいるとも言える。
しかし、すでにあなたが承知しているように、私はBDSの活動を支持していない。イスラエルの文化的ボイコットは臆病で恥ずべきものだと思っている。
なおニックはこの書簡に続けて、イーノは自身や自信の友人たちに音楽を教えてくれた特別な存在であり、音楽的なヒーローであるとして、以下のようにも綴っている。
他のミュージシャンの誰よりも、ブライアン・イーノは友人や私に音楽の作り方を教えてくれた。彼が作ったレコードは私が聴いてきたなかで、今でも最も大切にしている作品のひとつだ。この手紙にひとすじの苦悩が読み取れるなら、それが理由だ。自分のヒーローに宛てた手紙をしたためているのだから。
時には、ザ・バッド・シーズがイスラエルで公演を行ったことが正しいことだったのかと疑問に思うことがある。その問いに答えることは出来ないが、私に示される議論や正当性は理解し受け入れている。
実際のところ、音楽業界における親愛なる友人のなかには、私の決断を受け入れ難いと感じていた人もいたが、思案を重ねたうえで決めたことだ。ただ、ブライアン・イーノの言葉に従うことで、イスラエルのファンを軽視することは出来なかった。