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 思いがけない新しい音楽との出会いを果たす、そんなフェスの醍醐味を存分に味わえるこのMOON STAGE、今日も思いっきり濃厚! 開演前から、すでにフロアは満員、身震いするような緊迫感だ。
 トップバッターは3ピース、アナログフィッシュ。1曲目はキラー・チューン“Hello”! 《狭い世間を笑う巨大な僕の妄想 でかい世界が笑う小さな僕の声/Hello New World》 。名詩である。彼等の楽曲は内省的な世界観がユーモラスでポップな絶妙なバランスで楽曲に落とし込まれていて、ライヴ映えする。佐々木(Vo.B)、下岡(Vo.G)、斉藤(Dr.Vo) 、末恐ろしい3人だ。
 転調はもちろんのこと、リズム、テンポも一曲の中でどんどん変わっていくのにつれて、ぐいぐい気持ちがそのグルーヴに引っ張られていく。構成は複雑だが、「奇を衒う」なんていう意図によるものではなく、それが彼らの音楽的生理に忠実な表現フォルムだから、聴いていて気持ちいい。ドライヴしていてぐんぐん視界が開けていくような爽快感がある。ラストは2月リリース予定のミニアルバムから“BGM?”。短いタイトルを連呼するだけで胸に迫るうたを紡ぐ彼ら、目が離せない。
 フロント3人が紺のそろいの半そでシャツを着て現れたbloodthirsty butchers 、1曲目は“方位”。光が四方八方に飛び散っていくような、美しい曲。ギターを高く掲げるひさ子ちゃん、やっぱりかっこいい、うまい、そしてかわいい! セットリスト6曲中3曲は、ひさ子ちゃん加入後初のオリジナル・アルバムとなる『birdy』から。吉村とふたりでゆるやかに、ときに重々しくかき鳴らすギターの音――激しいし強いのだが、温かい音の塊に身体がくるまれているような、純粋で崇高なものに守られている気持ちになる。”love supreme“のオープニング、吉村が歪んだギターで何かを宣誓するようなフレーズを奏でた。歌詞はない。しかし、楽器同士の会話は非常に流暢で美しく、聴きほれてしまう。ラストは”JACK NICOLSON“。《悪い大人の手本でいたいんだ》《このバンドで 存在していたい》。MCはほとんどなかったが充分に雄弁で、多幸感で満たされるアクトだった。




 そして、NOTALIN’S !! あの遠藤ミチロウ(Vo.G)&石塚俊明(Dr)&坂本弘道(Cello)による3ピース。「渋谷陽一レコメンズ」コーナーなので、前説が。「ここにきているみんなはえらい! わかっている!! いつまでもラジカルでありつづけている、パンクをやりつつ、常に新しいスタイルに挑戦しつづけているところがすごい。戦友だと思ってます。若い皆さんに観てもらいたい」と渋谷。 挨拶そうそう、絶叫。突如、耳をつんざくようなチェロの音が鼓膜に突き刺さってくる。“マリアンヌ”“1999”そして“天国の扉”。「今年は災害とかいっぱいあってたくさんの人が亡くなっちゃったんですけど、来年はいい年になるといいんですけどね」と遠藤。フロアからは静かに拍手が鳴った。美しく澄んだアルペジオと「あーーーー!!!!」という渾身の絶叫。 “父よ、あなたは偉かった”では、わが目を疑ったのだが……チェロから火花が散ってました! 立ち尽くすフロアのお客さん。50歳を超えてなおもパンク・スピリットを宿し現役であり続けていることに畏怖の念すら覚えるが、なにより、とにかく観ていて純粋に楽しかった!(大前多恵)

アナログフィッシュ bloodthirsty butchers
1 Hello
2 LOW
3 確信なんかなくてもいいよ
4 バタフライ
5 世界は幻
6 BGM
1 方位
2 サラバ世界君主
3 sunn
4 ゴキゲンいかが・・・?
5 love supreme
6 JACK NICOLSON

NOTALIN’S(遠藤ミチロウ&石塚俊明&坂本弘道)
1 マリアンヌ
2 1999
3 天国の扉
4 父よ、あなたは偉かった