メニュー

MARTINの鳴らすヴァイオリンの豊かな響きをきっかけに始まったOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのステージ。先の11月に2枚目となる新作『NEW ACOUSTIC TALE』を発表したばかりの彼らだが、なんと本日のセットリストはすべてその新作から。彼らがバンドの現在地にどれだけ手ごたえを感じているか、分かるだろう。アルバムと同じく、ステージは“A Strait Gate”からスタート。表面的にはBRAHMANと音楽性では距離のあるこのバンドだが、1曲のなかで静と動のダイナミズムが織り成すカタルシスは合い通じるところがある。なにより身体から、生活から、滲み出るようなその歌は、BRAHMANと同じく、ロックとしての作為性をも超えていくような地平にある。2曲目の“Ice Queen”を終えたところでMARTINがMC。「いやー不景気だよね。カツカツだよね」という流暢な日本語が笑いを誘う。しかし、この音の豊かさは何なのだろう。しっかりとスペースがあるのに、まったくブレることのない、しっかりと大地に腰を下ろしたようなアンサンブル。そして、剥き出しの歌。ステージが終わる頃には、そのトラッド・ミュージックには確かに体温が宿っていた。(古川琢也)