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MOON STAGEをみっちり埋め尽くす多数のオーディエンスが待ち焦がれるのは、今年で6年連続出場となるOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(以下OAU)。SEなしでTOSHI-LOW(Vo・G)、MARTIN(Vo・G・Violin)、KOHKI(G)、MAKOTO(B)、RONZI(Dr)、KAKUEI(Per)の6人が登場し、奏でられたオープニングナンバーはThe Beatlesのカヴァーで“Across the Universe”。豊潤なアンサンブルにのって届けられる、TOSHI-LOWとMARTINのしなやかなコーラスワークが、MOON STAGEにピースフルなムードをもたらしていく。続くTOSHI-LOWヴォーカルの“gross time~街の灯~”を終えたところで、MARTINがMC。「今日いっぱいバンド出てるでしょ? みんな忙しそうにしてる。でもオレも忙しい。早く帰っておせち作らねえと。だて巻とか、黒豆とか。だから時間ないから早くやろう」と、流暢な日本語(MARTINはスコットランド系アメリカ人)で飄々と語り、フロアの笑いを誘う。その後は“New Tale”から、エモーショナルなMARTINのバイオリンがフロアのハンドクラップを導いた“Bamboo leaf boat”、まるで田舎道を走る荷馬車の中にいるような気分になるカントリー調の“Freight Train”と、徐々にプレイをヒートアップさせていくOAU。そして確信を込めて放たれるMAKOTOのウッド・ベースが際立っていた“pilgrimage”を経て、再びMCへ。「2011年あとちょっとですね。いろいろあったね。いろいろバレたね。TOSHI-LOWが面白いというのもバレたね」というMARTINのフリに、「今年は慣れない人助けをして、まぁちょっと疲れてるのかな。内緒なんだけど、生えました。白髪。……下の毛に」と、シモで応戦するTOSHI-LOW。その後、かみ締めるようなトーンでTOSHI-LOWは、震災について語った。「360度、見渡す限り何もない街。放射能で住めなくなった街。そういう街を見てると、今こうしてステージで歌えてるのが夢みてえだなって思う。(中略) 2012年、何ができっかな。やろうとすることに、遅いってことはねえよ。全ての人々が狼煙あげて、悲しみに寄り添って、手を取り合って生きていってもいいんじゃないかと思ってる。全ての現実。ひとりひとりの現実。そう、そのあとに……“夢の跡”」。そして立ち上がったラスト・ナンバーの“夢の跡”。移ろいゆく時間を描き出す表情豊かなサウンドスケープに浸りながら、オーディエンスは遠く離れた「あの場所」に、確かに思いを馳せていたのではないだろうか。(前島耕)