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「はい、こんにちは。よし行くか!」と、田中(Vo&G)がリラックスしたトーンで挨拶して“疾走”がスタート。じわじわと奥行き深く広がってゆくアンサンブルが本当に美しい。サウンドに合わせて体を揺らしつつも、うっとりと酔いしれた表情のお客さんの様子がとても印象的だった。 田中、西川(G)、亀井(Dr)+サポートでおなじみのベース金戸覚&キーボード高野勲という、シンプルな編成の演奏だが、このバンドの表現力は本当に半端ではない。幻想的なコード感と共にヒリヒリしたエモーションを突きつけ、重厚なクライマックスへと突き抜けた“CORE”。しっとりとしたメロディと熱い躍動感が緊密に絡み合い、無上の感動を呼び起こしてくれた“指先”……曲によってサウンドのタイプは様々だが、どれも深くのめり込まずにはいられない豊かな風味を渦巻かせていた。 「来年もよろしくお願いします。良い新年を迎えてください。ではちょっと懐かしいやつを」と田中が紹介して始まったのは“光について”。今までに何度も聴いてきたこの曲だが、彼らの今のモードの演奏で聴くと、一際狂おしく胸に沁みた。田中がアコースティック・ギターを穏やかにストロークしながら披露された“それを魔法と呼ぶのなら”は、後半に向かってバンド全体で光量を増してゆく様が圧巻! そして、ラストの“Pity on the boulevard”は、歪んだサウンドを熱く渦巻かせたパート/クリーン・トーンによる浮遊感を醸し出すパートの両方を劇的に交し合いながら、雄大な世界を映し出していった。曲が終わった後も暫く、夢から突然覚めたかのような不思議な余韻が場内に漂い続けていた。(田中大)