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12:05 ART-SCHOOL、木下の低血圧が、熱気を巻き起こす!
8/3 13:30 UP

予想にたがわず、顔色の悪い木下理樹。これほどまでに日光の似合わない男も珍しい。でも、そこがいいのである。この陽射しとの信じがたいほどの違和感が、ある種セクシーなムードすら醸し出しているように思えるのは、気のせいだろうか? 実際、この暑さに太刀打ちできるのはハンパな熱気ではなく「徹底的な冷気」なのではないか、とすら私は思っている。
1曲目の“ダウナー”演奏後、「エレカシの裏という時間帯に、ART-SCHOOLを観に来てくれて、ありがとう」とお客さんに向かって生真面目に、真っ直ぐにお礼を述べる照れくさそうな木下。この人の魅力は、この恥じらいと屈折とのアンビバレンスにあるなあ、と改めて感じる。微笑ましい瞬間だった。
“EVIL”“foolish”。まあ、よくもこれまで、と飽きれるほどに暗いタイトル。しかし、である。《死にきれず 生きてきた》《君をなくしたら 生きていけるはずはない》など歌詞を文字に起こしてみる一層くっきりとわかるのは、用いる言葉は確かに暗くてシリアスでナイーヴなんだけど、そこから浮かび上がるのは生への強烈な欲求と、孤独でありながら誰よりも強く他者を必要としているというロマンなのだ、ということである。だからこそ、彼らの音楽はこんなにもひりひりと痛くて、美しいのである。それは、この青く広い空に負けず劣らず澄み切ったイノセントな欲求だとも思う。突き放すような冷気と痛々しさをにじませる木下の泣きそうな高い声は、愛されなければ生きていけないのに、ハンパな愛は却って不安で受け入れられない、という引き裂かれた叫びのように、私には聞こえた。
「まことにありがとうございます。この12時という時間に、感謝しています」と、なぜかかしこまってボソボソと呟く木下。言っていることは別にどこもおかしくないんだが、なぜかくすっと笑ってしまう。「気を悪くしないでくださいね」とも言った。……なぜ? なるほど、その後演奏されたのは――“NEGATIVE”。何度ネガティヴと連呼しただろう? 痛快! あまりにも痛快だ。イベントだから、太陽の下だから、と見せかけのポジティヴを取り繕ったりせず、彼らは彼らのままでこのレイク・ステージという空間と溶け合っていた。熱かった。最後、木下はギターを叩きつけてガッツ・ポーズ。演奏的にもテンション的にも、文句ナシに最高のライヴだった。7月30日にリリースしたばかりのシングルはその名も『SWAN SONG』。湖を背に快挙を成し遂げたのも、思えば当然かもしれない。(大前多恵)
ART-SCHOOLタオルを巻いた2人組。
「昼のART-SCHOOLってなんかヘンな感じがしました。
でもよかった!」

見えないかもしれませんが、ライヴ後、初の放水が。