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日が沈んで、蝉の鳴き声が響き渡るSOUND OF FORESTもいよいよ3日間のクライマックスを迎える。今年の大トリは、結成10周年を迎えるこのバンドだ。「こんにちは、ART-SCHOOLです」と木下理樹(Vo/G)が静かに挨拶し、控えめなギター・イントロから爆発的なバンド・アンサンブルへと急展開する“MISS WORLD”でステージの幕を開けた。サウンドにシンクロして変化する、鮮やかな照明の中で疾走するナンバー“スカーレット”がそれに続く。狂おしいほどの情感が、統制された美しいロック・サウンドに乗せて浴びせかけられる。

宇野のインパクトのあるベース・ラインが牽引する“DIVA”では、演奏に熱が加えられると同時にバンド・メンバーの動きも激しくなってゆく。体全体から感情を音の形にして放っている感じだ。間髪入れずに理樹の開けっぴろげなヴォーカル・フレーズが突き刺さってくる“サッドマシーン”では、ギターも広がりのある美しい音色からノイズの洪水まで、その入り組んだ心象風景を切り取っては描き出してゆく。

ここで一転、4つ打ちのダンサブルなビートで“ecole”が披露される。深みのあるギターの轟音がオーディエンスを包み、ステージ上の4人は眩いバック・ライトの中でそのシルエットを浮かび上がらせていた。美しい。そして“あと10秒で”だ! どこまでもスリリングで激しいバンド・サウンドの交錯。それに合わせて色とりどりの照明が動き回る。これは音と光と感情のタペストリーだ。オーディエンスは五感すべてでそれを受け止めている。ねじ伏せるように放たれた“UNDER MY SKIN”をプレイし終えると、4人は言葉もなくステージから去っていった。

「あのう……みんなテレフォンズとかYUKIとかやってるのに、観に来てくれてありがとう。えーと、うん、いいんじゃない? そのセンスはね(笑)。あと一曲やって帰ります。どうもありがとう」。アンコールで再びステージに登場した理樹がそう告げて、オーディエンスの温かい拍手の中“シャーロット”が披露された。ミディアム・テンポのドラマティックな一曲でフィニッシュかと思いきや、更に耳をつんざく爆音“ロリータ キルズ ミー”へと飛び込んでゆく4人。ときに言葉よりも雄弁な音が胸に迫る、素晴らしいステージであった。(小池宏和)