熱くたぎる、この切なき情動! 遂に実現したザ・スマッシング・パンプキンズの来日公演。轟音トリプルギターが、究極ロックドラムが、エモーションの交感を巻き起こした武道館の一夜をレポート


現在発売中のロッキング・オン12月号では、ザ・スマッシング・パンプキンズのライブレポートを掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。



文=伏見瞬

2000年、ザ・スマッシング・パンプキンズは解散しました。

当時中学生だった私は、日本でのフェアウェルコンサートになった日本武道館公演を映像で観ていました。衛星放送か何かで全編放映されていたはずです。ライブには苦々しい雰囲気が立ちこめていました。「僕たちはブリトニー・スピアーズとバックストリート・ボーイズに負けたんだ」。ライブ映像にインサートされたインタビューで、ビリー・コーガンは言います。納得の解散ではなく、彼らが世界に受け入れられないがための解散だと誰もが思いました。とにかく、ビリーに覇気がなかった。大好きだった“バレット・ウィズ・バタフライ・ウィングス”はディストーションとシャウトの爆発がない淡泊な演奏になっている。メンバー間には、まともな会話が成り立っていないよう。「昨日パラパラを踊ったんだ、あれクレイジーだよね!」と、必死に場を和ませようとするジェームス・イハのMCには、微笑ましくも悲しい気持ちになりました。

復活したパンプキンズに、ジェームスの姿はありませんでした。そもそも、復活後の評価は決して高くなかったはずです。復活作の『ツァイトガイスト』は、悪い作品ではなかった。ただ、当時のポップシーンに彼らの居場所はなかった。やがてジミー・チェンバレンも脱退し、オリジナルメンバーはビリーのみとなる。2013年のサマーソニックでのステージを私は観ていません。でも、ライブが盛り上がらないのは容易に想像できます。Mr.Childrenのファンが無反応で出番を待っていたことを責める言説が広がったけれど、当時の彼らを巡る状況を考えれば仕方ないと思っていました。ディストーションと演奏の激しさを売りにしたオルタナサウンドの価値は2010年代には底値だったし、長いインプロに代表されるプログレ要素はもっと時代外れでした。それでも、彼らは活動を続けました。90年代の時のように注目されるわけではない作品を、世に送り続けました。

時代は巡り巡り、パンプキンズの再評価もされるようになる。彼らを指標とするようなバンドも増えていきます。そのなかでの来日。ジェームスもジミーも再加入しての来日。きっと、大いに祝福されるに違いない。期待の感覚が広がります。

7回の来日公演のうちの2公演目、日本武道館。ライブを観て分かったのは、「彼らは最初からロックスターだった」ということでした。それは何を意味するか。「オルタナティブ」のバンドではない、ということです。

会場はびっしり満員。ビリーは赤いボタンの黒僧侶服、ジェームスはジャケットで登場。『Machina II〜』に収録された“Glass”のパンキッシュな勢いからはじまり、“ヘヴィ・メタル・マシーン”のリフメタルに向かう。(以下、本誌記事へ続く)



ザ・スマッシング・パンプキンズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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