極限までソリッドに研ぎ澄まされたバンドアンサンブルと、オフビートなメロディで聴き手に浸透する歌のマジカルな包容力と訴求力。そして何より、公演時点で73歳という年齢を忘れさせるほどに、飽くなき音楽愛が息づく表現の美学——。スティング自身2年ぶりの来日公演「STING 3.0 JAPAN TOUR 2025」。その2日目となる東京公演初日=9月14日・有明アリーナ公演で繰り広げられたのはまさに、ロックもポップも独自の哲学で漂白し高純度結晶させてきたスティングそのもののステージだった。
長年の盟友ドミニク・ミラー(G)、そしてマムフォード&サンズなどで活躍もしているクリス・マース(Dr)をサポートに迎え、ポリス以来となる3ピース編成での来日公演に臨んだスティング。スタンドマイクではなくヘッドセットマイクのスタイルで、「トキオ〜!」と高らかに呼びかけて歌い始めたポリスの楽曲“孤独のメッセージ”でいきなり場内一面のクラップ&シンガロングを呼び起こし、圧巻のロングトーンで冒頭からクライマックス級の躍動感を描き出す。さらに、“ルーズ・マイ・フェイス・イン・ユー”で広大な空間を刻一刻と歓喜の頂へ導き、“イングリッシュマン・イン・ニューヨーク”で熱いコール&レスポンスが巻き起こる……。音楽の核心だけを響かせるような3人のアクトに、満場の観客が手拍子と大合唱で応える。最高の光景だ。
“フィールズ・オブ・ゴールド”や“ネヴァー・カミング・ホーム”、“マッド・アバウト・ユー”などソロキャリアの名曲群はもちろん、“アラウンド・ユア・フィンガー”、“キャント・スタンド・ルージング・ユー”などポリス時代の楽曲も、隅々にまで血と脈の通った「今」の楽曲として鳴り渡っていたこの日のアクト。本編ラストの“キング・オブ・ペイン”から“見つめていたい”、アンコールの“ロクサーヌ”から“フラジャイル”の流れに至るまで、シンプルにして豊潤なスティング・ワールドの極意に改めて驚愕と感激を禁じ得ない2時間だった。(高橋智樹)
スティングの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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