ぼくりりの世界の見つめかたと歩き方がよりはっきりとわかる作品になっていた。
「YES」か「NO」か、「善」か「悪」か、「右」か「左」かーー二元論のなかで単純な選択をしていくことで破滅していく世界。
その有り様を正確に指摘/描写していく、ぼくりりは残酷に見えるくらい冷静。
しかし、そうして描いた地図に沿って、「音」と結ばれた「言葉」、または「言葉」と結ばれた「音」を、砂粒で道を作っていくように、二元論の間にある膨大な隙間に確実に配置していく。
そんな気が遠くなる作業を「これ、やらないと何も始まらないですから」とばかりに迷いなく続けて音楽を生み出していく、その姿はやたら「元気」にも見える。
いろんな価値観の都市建造物が崩れてしまって砂塵が舞っている、まさに「ディストピア」で油まみれの手で汗をぬぐいながら音楽というモンスターモービルをチューンナップしている、そんな感じ。
ぼくりりが、新たな時代の音楽ヒーローとして、爆走し始める時は近い。(古河)