ケミブラがサントラ担当の『ハンナ』を観た!


まず、ケミカル・ブラザースによる『ハンナ』のサントラは、去年のトレント・レズナーの『ソーシャル・ネットワーク』に劣らないほど、素晴らしい。
映画には欠かせない要素でありながらも、1枚のディスクとしてもちゃんと聴き応えがある。

で、映画なんだけど、これもまた観応えバッチリ。監督が『プライドと偏見』や『つぐない』のジョー・ライトと聞くと、ちょっと肩に力が入ってしまう感じだが、そんなことはない。本作は、これまでのイメージを払拭するほどアクションを見せることに徹底した娯楽映画なのである。
とはいえ、だからってその内容はノータリンではなく、まったくテイストは違うが、たとえば『レオン』や『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『ラン・ローラ・ラン』や『28日後...』みたいに、ノン・ハリウッドな独特のスタイルををものにしているジャンル映画なのだ。
物語自体も、『レオン』と『ボーン』シリーズを足して割って、ちょっと『キック・アス』な要素を含めたような内容で、ざっと言うと、フィンランドの人里離れた森の中で、父親に殺人マシーンとして育てられた少女が、ひょんなことでCIAに追われる身となり、モロッコからドイツを目掛けてヨーロッパを駆け巡るというもの。もちろん、その間、何度も刺客とバトルするのだが、同時に初めて経験する“普通の16歳”としての時間を謳歌する様子も描かれているのが面白い。
そんな殺人マシーンことハンナを演じるのはシアーシャ・ローナンで、父親にはエリック・バナ、そしてCIA捜査官にはケイト・ブランシェットがそれぞれキャスティングされている。これ、完璧。
特にシアーシャとケイト・ブランシェットのガチンコ対決はかなりの見もの。本当にシアーシャは次世代を代表する実力派になりつつある。
そしてケミブラの音楽。ハイパーなアクションを演出のためにエレクトロ・ミュージックを使うことは今となっては珍しくないが、ジョー・ライト監督は逆にケミカルの音楽で“不穏”を演出。追われる身に常にまとう緊張感を見事に音楽で体現しているのだ。
公開は8月27日とまだ先だが、CUT8月号(7月19日発売)では試写プレゼントも展開するので、是非、注目して欲しい。

ちなみに、この映画でもっとも歯を食いしばったシーンは、ハードなアクションじゃなくて、歯磨きするケイト・ブランシェットのシーン。電子ブラシで普通に歯を磨いているだけというのに、これがまた背筋がゾッとするほどおぞましく演出されているのだ。ジョー・ライト、意外と変態(褒め言葉)なのかも。(内田亮)
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