最近好きなマンガ:『機械仕掛けの愛』


いかなる新刊を読んでも、いつでも素晴らしいというマンガ家はたくさんいるけれど、自分にとっては、業田良家先生はそのもっとも象徴的なひとりだったりする。
そういう作家の作品は、過去に遡ってみてもやっぱり素晴らしい。
そんな業田良家最新コミック『機械仕掛けの愛』も、だから、当然のことながら、大変素晴らしい。

是枝裕和監督の『空気人形』の原作となった同名の短編を想像してもらえばわかりやすいが、業田先生のここ数年の作品は、ロボットや人形、あるいは神様といった、「人間ではない存在」を通し、いかに人間の愛情や悲哀を浮き彫りにするか、というテーマで描かれている。
そして、どの作品もすべて、ものの見事に「人間」の本質を言い当てている。
逆説的だが、たとえば、人間を模したロボットを描くことで、人間が本来持ち合わせているはずの優しさやぬくもりを炙り出してしまうのだ。
『機械仕掛けの愛』もまさにそんな作品で、9つのオムニバスすべてに共通した、だけど色合いの違うペーソスと愛情が込められている。
強烈なアイロニーでもありながら、人生を賛歌するあたたかな読後感が残るのがまた嬉しい。
全部映画にできちゃいそうな感じもする。

『空気人形』の空気感がピンとくる方、この最新作も真正面からおススメいたします。(小柳)
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