Beach House


昨年の傑作アルバムから一年、ようやくのビーチ・ハウス苗場降臨である。そしてそれは、こちらの期待をしなやかに超えたものだった。

予想以上にレコードを再現したその演奏力と、歌の強さにまずちょっと驚く。この手の雰囲気命な音は、パフォーマンスが貧弱だと悲しいものになりがちだけど、そんなことはなかった。

ということはつまり、ヴィクトリア嬢の気高い美しさがそこに厳然と屹立していたということである。それは、拝んでしまいそうになるということである。ベル薔薇のオスカルみたいなヘアが、もううっとりなのである。

それにしても、この独特のタイム感を持つ桃源郷のごとき音楽は、ただ美しいものとして、そこにあるのではない。ビーチ・ハウスの紡ぐドリームは、いつもどこかで歪み、軋み、崩れていく。それは、そうした壊れを内包しないものに美はないとでもいわんばかりな態度として、運命づけられているかのようだった。

レッドマーキー、完全に溶けてました。(宮嵜広司)