カート・コバーンのドキュメンタリー『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』が示すこと

カート・コバーンのドキュメンタリー『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』が示すこと

カート・コバーンのドキュメンタリー『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』を試写会で観た。

カート・コバーンという究極のロック・アイコンはどうやって誕生したのか。文字通り「誕生」という意味でいえば、彼はごく普通にこの世に生まれてきた。他のどのキッズとも変わりない普通の子供として生まれてきた。でも、唯一違ったのは、彼が天才だったということだ。エンターテインメントとは、ポップ・ミュージックとは複雑なもので、周囲がその才能をもっともっとと求めてしまうところがある。というか、そうした「現象」を含めたすべてがポップ・ミュージックの真の姿だ。そのことが間接的にも直接的にも影響して、人生を変えられてしまった天才達がたくさんいる。

アイコンになるというのはどういうことなのか。それを考えると複雑な気持ちにさせられるが、この映画は娘フランシスの監修のもとカート・コバーンの「素」にフォーカスし、彼を取り巻く「現象」についてはあえて淡々と見せている(というか、ライブ映像や当時のメディア露出などは、それだけであまりにもすごすぎる)。だから、観た後、複雑な気持ちにはさせられない。ただ、カート・コバーンという才能が、世の中に出てきてよかった、と切実に思い、ことさら思春期にニルヴァーナの音楽に救われる(というとカートは嫌がるだろうが、聴き手としてはその言葉しか見つからない)人間がたくさんいるということを改めて思い、ニルヴァーナを聴き返す。ただそれだけのことだが、凄いことだ。

それから、モンタージュ・オブ・ヘックというカートの作ったミックステープに収められた様々なエヴァーグリーンポップと、メタル、ヘヴィ・ロックの取り合わせを知るにつけ、美しいものと破滅的なものの両方にとりつかれて仕方ないという感覚が90年代のカウンターカルチャーを形作り、今ではもはやメインストリーム化されているということも思い出される。

https://www.youtube.com/watch?v=VglUAZ8I-Ek

6月27日から限定公開。
http://liveviewing.jp/contents/cobain/
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