5ドルの曲はどう聴こえるのか?

5ドルの曲はどう聴こえるのか?

『NPRmusic』に、「5ドルの曲はどう聴こえるのか」というタイトルの記事がありました。

http://www.npr.org/blogs/therecord/2013/09/11/219727031/what-does-a-song-that-costs-5-sound-like?sc=tw&cc=twmp

20年以上レコーディング業界にいるCookie Marenco氏は、ソニーが先週発表したハイ・エンド・オーディオの影の立役者だそう。
実は彼女は、スーパー・オーディオの音楽をダウンロードで販売するのに成功した人物。

Marenco氏が採用しているのはDirect Stream Digital、略してDSDと言われるフォーマット。
1960年代から出回っているものだが、スーパー・オーディオCD(SACD)でのみ採用されてきた。

オンラインで最初に購入されたシングルは1997年、デュラン・デュランの”エレクトリック・バーバレラ”。
当時、音楽ダウンロードを商業展開する草分けのひとつであるリキッド・オーディオで働いていたMarenco氏は、当時自らの携わっていたことについて、「インターネット上の音楽? 気でも狂ってるの? そんなこと可能なわけ?」と、アーティストやレーベルの人たちに言われたと言う。
リキッド・オーディオで扱っていたのは、今iTunesで使われているMP3やAACフォーマットの圧縮オーディオダウンロード。
Marenco氏自身、ミュージシャンでもあるため、MP3がCDに比べ音質的に劣っていることはわかっていたものの「インディペンデントのアーティストにとっては、各々で競争できるという意味では素晴らしいことかもしれない」と思い、業界を変えるかもしれないと思っていた。
「蓋を開けてみれば、技術面を担う会社が音楽業界に参入し、そうした会社は音楽やミュージシャンにどんな影響があるかに無頓着だった。まさかMP3が爆発的に普及してレコードビジネスを破壊するなんて、誰も思っていなかったはずだ」

MP3の音質の悪さは必然だった。
ファイルの容量は小さいし、ネット環境が悪くても受け渡せるようにしなくてはならなかったからだ。

Marenco氏はある日、12人のエンジニアとアーティストをレコーディング・スタジオに招き、どれがどの手法で録音されたかを伝えずにアナログ・テープ、ハイレゾ・デジタル、DSDの聴き比べをしてもらった。
すると「テープは一番音質がよく、次がDSDだった」そうだ。

そしてMarenco氏はBlue Coast Recordsというレーベルを立ち上げ、音質にこだわるビジネスを始めた。

「2007年には、ミュージシャンにとってハイ・クオリティ・オーディオという概念は馴染みがなかったし、誰もがMP3に慣れていて、諦めているみたいだった」そう。

そして3年ほど前に、DSDをダウンロード可能な音楽ファイルにすることを決意。Sony PlayStation 3でしか再生できなかったが、価格は1曲につき5ドル、アルバム1枚につき50ドル。
「何千という人がダウンロードしたのはショックですらあった。でも面白いのは、ユーザーが求めてきたのが”もっと安く”ではなく、”もっとコンテンツを”だったことだ」と言う。

ニール・ヤングも来年PONOをローンチするし、ワーナーからのバックアップも受けている。
ソニーの新しいオーディオ・プレイヤーではDSDも再生きでるというし、Consumer Electronics Associationによれば、もっといろいろ展開されるのだという。

それでも、こうしたサービスや機器の価格は高い。
でも、Marenco氏はコーヒーと比較する。「例えばスターバックスは、価格よりもクオリティを提供することで、コーヒーを飲む何%かの人をコーヒーの目利きに育ててみせた」と言う。

という記事です。

ここ日本でもオーディオファンだけでなく音楽ファン全体に浸透しつつあるDSD。
もっと主流になる日がくるかもしれない。
そういうことを考えると、例えば電子書籍などと同じで、単純にフィジカルでないことが悪だというような一元論で済ますような話ではない、というのがよくわかる。
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