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    主におたく向きなのに奇跡的にキャッチー。来日公演でMGMTの本質を再確認。

    主におたく向きなのに奇跡的にキャッチー。来日公演でMGMTの本質を再確認。

    来日ラッシュ、始まりました。そのスタートはもちろんMGMT! 新木場スタジオコーストでのライブを観ました。ここ東京で今回のツアーを締め括るとあって充実のライブだった。ライブは”Congratulations"から開始。その時点であっけなくサード・アルバム『MGMT』の謎が解けてしまった。セカンド・アルバムにして改めて「ロック・バンドになる」という決意表明を見せたMGMTは、バンドのストーリーとしてはあの時点のままのMGMTだったのだ。

    サード『MGMT』とはつまり、アンドリューとベン2人にとっての究極のデトックスアルバム、だったと言えるのだと思う。しかし面白いのは、そうしたセラピー然となるべくアルバムを2人はあくまでアーティスティックに作り上げたということ。

    MGMTは、00年代後半から10年代にかけての空気を確実に射抜いてきた。例えば、リンゴマークのスタイリッシュさには抗えないが、DOSのレトロ感にも惹き付けられて仕方ないという感覚。アウトドアよりインドアのほうが居心地がいいがサーフィンも最高だと思う感覚。白黒つけたくない。ハイとロウをちょっとずつ、いろんな価値観のなかからジャストなものをちょっとずつ選び取りたい。それをごく自然な消費/行動パターンとして身につけている――そういうライフスタイルの究極のサウンドトラックが、MGMTなのだと思う。

    しかもMGMTは、そうした価値観を雰囲気で垂れ流しにするのではなく強烈なアイロニーという形でアート表現にしている。そこが、「なんとなく00年代後半から今っぽい」という数多のサウンドとは決定的に違うところで、だから世代感覚を超えてMGMTはロックとポップの普遍にもなる。そういう意味で最も近いのはフレーミング・リップスだと思う。
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