飲み屋の話

飲み屋の話

これを読んでおられる中で、酒好きだという人にうかがいたい。
ひとりで行ける飲み屋って、あります?

常連というか。「おいーす」「あ、兵庫さん、いらっしゃい」
みたいな、そういう店。
私、ありません。
1軒だけ、渋谷の焼き鳥屋で、ひとりで行ける店、ありますが、
それは店主が友人だからであって、しかも「通ってるうちに友人になった」
のではなく「元々友人だった人が店主になった」というケースなので、
それはカウントしません。

なぜひとりで行けないのか。
人見知りとか、なじめないとか、お店の人に覚えてもらえないとか、
話しかけるきっかけがつかめないとか、まあそんなようなことですが、
あと、私の場合、
「ひとりでぼーっとすることができない」
というのがある。

居酒屋界の私の心の師匠、太田和彦氏曰く、
「居酒屋とは、ひとりでぼーっとするところ」だそうですが、
それが無理なのです。
あ、太田和彦氏、ご存じない方は各自調査を。
本はもちろん、「全日本居酒屋紀行」の
DVDボックスまで買いました、私。

話を戻す。
ひとりでぼーっとできない、となると、
お店の人と話せていればまだいいが、
そうじゃない時は、どうしていいかわからない。
というか、そもそも、お店の人と話せるほど親しくなれない。
となると、ひとりでぼーっとするしかないけど、
だからそれができないんだってば。

というわけで、どっちに転んでもダメ。
なので、「だったら、家でひとりで飲む」ということになる。
テレビ観ながらとか、音楽聴きながらとか、本を読みながらとか。

と、長年そう思い、実際にそうしてきたのですが。
私のその「外でひとり飲みできなさ」を初めて打ち破ってくれたのが、
上の写真のお店です。

このブログで何度もネタにしている、東京・下北沢、曽我部恵一社長経営の
カフェ兼中古レコード店、CITY COUNTRY CITY。
カフェ兼中古レコード店であるがゆえに、
「飲みながらレコードを漁る」ということができるのです。

店に行くと、カウンターでビールを頼むが、座らない。

で、ひと口飲んで、レコードを順番に見ていって、
しばらく見たらカウンターに戻って、またビールをひと口飲んで、
またレコード漁りに戻って……ということを、しばらくくり返す。
で、だいたい終わったら、試聴用プレーヤーのところに行って、
ピックアップしたレコードを順番にちょい聴きしていく。
それも、飲みながら。
で、選び終わったら、買って、帰る、という。

これ、「ひとりでも大丈夫」を超えて、
「ひとりじゃなきゃできない」レベルの飲み方だ。
なんだ「レベル」って。
でもそうでしょ。誰かと飲みに来てるのに、
レコード漁ってるわけにはいかないし。

という意味で、ちょっと画期的なお店だったりするわけです。
店主はそんなこと、びたいち考えていなかったと思うが。

ただ、ここで、私と同じことをやっている人、見かけたことないのが気になります。
飲む時は飲むだけ、レコードを漁る時は漁るだけ、がセオリーのようです。
なんでみんなやらないんだろう。楽しいのに。
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