利き腕の話 さらに続き

利き腕の話 さらに続き

前回の続きです。
ギターやベースの利き腕の話ね。
(これ → http://ro69.jp/blog/hyogo/44890 )
今回は、ドラム編です。

実は、ドラムの右利きのフォームにも、私、かねがねから疑問を持っていました。
かねがねからって、いつから。私、昔、ドラムやってたんですが、
初めてドラムセットの前に座って叩いてみた、中3の時からです。

ただ、私のこの、ドラムの利き腕に対する疑問、
ギターの時の疑問とは、ある意味、逆です。
ギターの場合は、

フレットを押さえるのと、ピックを持って弦を弾くの、
どっちがより細かい作業が必要そうかっていうと、フレット押さえる方じゃない?
だったら、右利きなら右手でフレット押さえた方がいいんじゃない?

という、疑問でした。

で。ドラムの右利きの基本フォームは、どういう叩き方か。
右手はハイハット、左手はスネア、右足はキック(バスドラムね)、
左足はハイハットのフットペダル、という形です。
だから、右腕と左腕をクロスさせて、右手でハイハットをチッチッて
叩きながら、左手でスネアをパンッて打つ、あの形になるわけです。

何故「右手はハイハットで左手はスネア」なのか。
スネアとハイハット、どちらがより細かなアクションが
必要かというと、ハイハットだからだ、
だから、右利きならそれを右手で叩くべきなのです。
26年前、ヤマハ広島店のドラムスクールで、Y先生にそう教わりました。
Y先生、のちにFLEXというバンドで上京し、デビューした名ドラマーです。
FLEXというのは、現在超大物アレンジャー/プロデューサーになっている
CHOKKAKUこと島田直氏が、率いていたバンドです。

さあ。すっかり話がそれた。戻します。

えーと、要は、器用なのは右手なんだから、右手でハイハットを叩くべき。
という理屈は、わかる。
しかし、当時の僕はメタル小僧だったので、ドラムの生音はでかければ
でかいほど偉い、と思っているところがあってですね。
右利きの人の場合、右手と左手、どっちが力が強い? 
右手でしょそりゃ。
だったら、スネアは右手で叩いたほうがよくない?
と、思ったわけです。

あと、わざわざ腕をクロスして叩くのも、よくわからない。
だって、こんがらがりそうだし、腕を振り上げたりしにくいじゃないですか。
普通に、交差させずに、左手でハイハット、右手でスネアを叩くのではダメなの?

と、Y先生に言ってみたら、「やってみい」という答えが返ってきた。
やってみた。ロクにハイハットが刻めなかった。
で、右腕と左腕を、叩きながらシンバルやタムなどに移動させる時も、
「腕を交差」方式の方がスムーズであることも、やっていくうちにわかった。

ただ、力が強いのはやっぱり右手の方であって、ああ、右手でスネア
叩けたらなあ、と、どっかでずっと思っているところがありました。


で。大人になって知ったこと。
ごくわずかだが、ドラマーには、右利きでも左利きでもない叩き方の人がいる。

あれ、僕と同じような疑問を持ち、そして僕のようにあきらめず、
その疑問を解決すべく、その叩き方を編み出したのだと思う。
最初に知った時、すごくびっくりし、そして納得し、さらに、感動すら覚えました。

まず、右利きは、さっき書いたフォームです。
左利きは、その逆。ドラムセットが左右が逆になっていて、
左手でハイハット、右手でスネア、左足でキック、右足でハイハットペダル、という形です。
元ART-SCHOOLで、今LUNKHEADのサポートで叩いている桜井雄一がそうですね。

で。右利きでも左利きでもない人というのは、まず、ドラムのセットの並びは、右利きの人と同じ。
右足がキックで左足がハイハットペダル、というのも右利きの人と同じ。
しかし。左手はハイハット、右手はスネアで、腕をクロスさせずに叩くのです。

世の中にはそんなドラマーがいる、ということを、僕が初めて知ったのは、20年前だった。
フィッシュマンズです。茂木欣一。今スカパラで叩いているキンちゃんね。
その次に見たのは、東京事変の刄田綴色でした。

で、そういう叩き方をする人は、ちょっとおそろしいくらい
すばらしいドラマーである、という事実があります。
って、例、二人だけですが。

ただ、「手をクロスさせて叩く」フォームには、長年にわたって培われてきた
「こうやればスムーズ」ってマニュアルがあるけど、
この「右利きでも左利きでもないフォーム」には、それがない。
あるのかな。実はあるのかもしれないけど、僕は知らない。

そうすると、スティックの動かし方、タムやシンバルへの移動のさせ方など、
ゼロから自分流のマニュアルを作っていかなくてはならない。
キンちゃんも、刄田綴色も、それをやったわけで、
「そこまでやる=すばらしいドラマー」っていうところは、確実にあると思います。


ただ、もしかしたら、単に「必要に迫られて」という理由かもしれません。
さっきも書いたけど、左利きのドラマーの場合って、ドラムセットを左右
逆にしないといけないのですね。
そうすると、アマチュアの対バンでドラムセットを使い回す時など、
セットを逆に組み直して、ってことはそれぞれのドラムの音を拾うマイクも
立て直して……って、もう大変にめんどくさいのです。
対バンや、ライブハウスの人や、それこそメンバーからも、
ひんしゅく買うのです。
キンちゃんも、刄田綴色も、ほんとは純粋に左利きなんだけど、
そのひんしゅくを避けるために、あの叩き方を編み出したのかもしれません。
と、今、ちょっと思いました。

写真は、12月22日にリリースになるライブDVD、
『東京スカパラダイス国技館&東京スカパラダイス体育館』。
キンちゃんの妙技をぜひご堪能ください。
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする