デビュー50周年を記念するツアー「THE JOURNEY」を観て感じたユーミンの現在

現在の大規模アリーナライブではLED演出が全盛だ。エンドステージの背面に巨大なLEDビジョンを設置し、そこに一曲ごと違う演出映像を送出することで場面転換を行う。2時間を超えて飽きさせないエンタテインメントを作るにはルックのバリエーションが不可欠だが、巨大LEDというテクノロジーの登場はそれを容易にした。
しかしLEDを一切使わずにそれを可能にするライブもある。
松任谷由実のキャリア50周年を記念して行われている全国ツアー「THE JOURNEY」の日本武道館公演を観た。
アリーナのセンターに置かれたのは巨大な船。
その船上を舞台に繰り広げられる2時間20分のショーは、リフターやターンテーブルなどの舞台機構、ステージ全体を包むドラムカーテン、舞台狭しと動き回る9人のアクター、特殊効果、ライティング、レーザーなどによって一曲たりとも同じルックを作らず進んでいった。実は緻密にデジタル制御されながらも、客席からは船のマストなどアナログでフィジカルな質感のみが印象に残ることになる。
誰よりも早く映像演出を取り入れていたユーミンの最新ツアーがこの形態であることがとても興味深い。
船を舞台にしたこのツアーは、過去ユーミンが船、航海、海などをテーマにして作ったいくつかのショーのリプライズを含んだセルフオマージュとしても構成されている。新しいファンには新鮮な印象を与えただろうし、往年のファンにとっては時々の自身の思い出も併せて想起させてくれたと思う。

ユーミンとしては珍しい社会的メッセージを内包した"Now Is On"という曲があり、ライブ後半の入り口で歌われた。
「航海」をテーマにした今回のライブの中で一見唐突な印象を持ったのだが、最後にそれがこのショーの全編に貫かれたメッセージだと解った瞬間、全身に鳥肌が立った。
(海津亮)
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