深夜になると急速に膨れ上がる切ない恋心と胸騒ぎを、体を静かに預けることができるほどのゆったりとしたリズムで再構築したAnonymouzの最新曲“夜行性 (100回嘔吐Remix) feat. 和ぬか”。
和ぬかによる新たな作詞・作曲・歌唱パートの追加というアレンジと100回嘔吐によるリミックスで生まれ変わったこの曲は、今年2月にリリースされたAnonymouzのデビューアルバム『11:11』に収録されている。
Anonymouzが作詞作曲を手掛けた原曲はほのかに漂うシティポップテイストと疾走感のある四つ打ちサウンドで、まさに楽曲とMVで描かれている通り《だんだんと冴えていく夜行性》というフレーズを再現したハウスナンバー。
朝まで待てない焦燥感と時を刻めば刻むほどにのみ込まれてしまうような酩酊感を歌詞とサウンド双方で表現しつつ、なんといってもAnonymouzをAnonymouzたらしめる儚さと歪さ、低音と高音がないまぜになった無二の歌声が、何度でもリピートしたくなる中毒性を生み出している。
元々はAnonymouzの代名詞とも言えるJ-POPの英語カバーシリーズで和ぬかが作詞作曲を手掛けたMAISONdes“ヨワネハキ feat. 和ぬか,asmi”をカバーしたことに端を発し、今回のコラボが実現。
和ぬかによるアレンジでは上述したようにグンとテンポを落とし、切なさに胸が押しつぶされそうになるのを堪えて孤独な夜を超えようとする、というよりはその切なさも焦燥もそっと包み込むようにひとり佇む部屋に深く染み渡っていく。
先天的に夜の匂いを纏ったふたりのボーカルの掛け合いによって《私》と《あなた》の存在をくっきりと浮かび上がらせ、原曲にはない和ぬかによるラップパートが《私》の輪郭を色濃く鮮やかに映し出す。そしてそれらが100回嘔吐によるリミックスで絶え間なく訪れるリビドーを無限に解放してくれるような中毒性を孕んでいて、「眠れない夜を過ごす」すべての《私》にどこまでも寄り添ってくれる。気づけば夜が待ち遠しくなる。(橋本創)
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