自己肯定感、多様性──巷に溢れる言葉をまるっと包み込むラブソングを歌う、ルイというシンガーソングライターを知ってほしい

自己肯定感、多様性──巷に溢れる言葉をまるっと包み込むラブソングを歌う、ルイというシンガーソングライターを知ってほしい
先日、ルイというシンガーソングライターの路上ライブを新宿で観た。ギターもピアノも弾ける彼だが、この日はシンプルにギター1本で、そのぶん歌詞がしっかりと届いてきた。

去年リリースされた、“愛の囚人たち”という楽曲がとても素晴らしい。10代の頃に書いたというのを疑ってしまうほど、ただ好きな人への想いを綴ったラブソングではない新しさを感じる。

冒頭のサビで《自分一人愛せないままに/誰かと恋に落ちようなんて/わがままなことだと/もう分かっているけど》といきなり歌われる。この感覚が10代のうちにわかっていて、こんなに的確に言語化できるなんてすごい。確かに自己肯定感が低いと恋愛はなかなかうまくいかないものだけれど、ここまで「恋愛」を客観視している歌は珍しいように思う。と言いつつも、昨今は「セルフラブ」といったキーワードだったり、心理学や自己啓発的なショート動画が流行っている感じがあるし、自然とそういう情報が知識として入ってきやすい時代感が表れているような気もしている。だとするならば、《愛される喜びを知らずに/私は私を愛せないわ》と続く歌詞は、そんな知識ではどうにもコントロールできない恋心を代弁する素直な歌詞に聞こえるし、心が救われる人も多いのではないかと思う。
自分の気持ちを軽くしたり生きやすくなるために仕入れた情報に苦しめられながら、好きな人に愛してもらえたら自分のことも好きになれるのになと願う。とても令和的なラブソングだ。


そして、路上ライブで披露していた“タネを蒔く”にも耳を惹かれた。
《男だけど男が好き/女だけど私女の子が好きだわ/ってみんな愛情の実を食べて/いつか当たり前に笑うのさ》《アダムとイヴが男と女だって/誰が決めたんだい/これだけ賢い/ヒトだからこその恋がある》
恋愛の多様性を歌う曲は既に珍しいものではなくなっているけれど、こんなにナチュラルに歌詞にできてしまうことにも新鮮さをおぼえる。

もっとこんなラブソングが増えたら、生きやすくなる人も増えるんじゃないか。そんなことを思わせてくれたルイ、次はどんな歌を紡いでくれるのだろうか。(有本早季)


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