結局、太陽がどうなっていたのか肉眼ではよくわからなかった。夜、ニュースで、カイキニッショク、カイキニッショクと連呼されるのを聞きながら、そういえば小学生の頃、カイキニッショクという響きが怖くて仕方なかったのを思い出した。「怪奇日蝕」とか「回忌肉食」とか「蝕む」とか「虫を食う!?」とか漢字のイメージだけで雑誌ムーみたいな、超常現象を妄想していたに違いない。卑弥呼の死と関連づけられたりしていたし。
そして、『日蝕』といえば平野啓一郎が芥川賞を受賞したデビュー作。クロソウスキーの『バフォメット』やテンプル騎士団や両性具有といったモチーフは、私の日蝕への誤ったイマジネーションをさらに広げてくれた。(井上)