モッズ

モッズ

グラム・ロックや、70sのUKパンク、
80sのニュー・ウェイヴやニュー・ロマンティックス、
そして勿論90sUKのアイデンティティを取り戻したブリット・ポップetc。

数多い「UK発のユース・カルチャー」の中でも、
最も「イギリス特有の」という形容句が似合うのが、このモッズ・ムーヴメント。

もともとは50s後期〜60s初期の
英ワーキング・クラス・キッズの間で流行った「新しい音楽やファッション」
がきっかけで浮上した「若者オンリー」のサブ・カルチャーだった。

ザ・フーの、♪歳を食う前に死にたい、というあまりに有名なフレーズも、
多分こうした当時の風潮を歌に取り込んだもの。

とにかくモッズの由来は、
それまで自分たちの親世代が何百年も伝統的に守ってきた
「自分の階級に満足して地道に働き、つつましくもまともな人生を送る」
というワーキング・クラスの掟に対し、

「あくせく働いたって、どうせ俺の親父も死ぬまで階級システムからも極貧生活からも抜け出せなかった。
どうせ抜け出せないなら、稼いだ金は全部カッコイイ服やレコードにつぎ込んで、毎日クラブで夜通し踊ってたほうがまし。
明日の生活費?老後の蓄え?そんなもん知るか!
俺たちには今日さえあれば、今さえ楽しければそれでいいんだよ」

という当時の新世代からの反撃/カウンター・カルチャーだった。

といっても、
パンク世代の筆者がこのムーヴメントに初めて触れたのは、
この映画『Quadrophenia』がロンドンで初公開された79年。

もちろん「後追い体験」という形でだったわけだが、
「シャープ&エッジーなファッション・センス」や
「ハード&アグレッシヴなタテノリ・サウンド」、
「前世代の古い因習に断固NO!を吐き捨てる反逆スピリット」など
パンクとの共通点も意外と多く、
当時のUKパンク層にも支持者が急増したのを覚えている。

ザ・ジャムを筆頭にした、
「第一期モッズ・リヴァイヴァル」が急激に台頭し始めたのもこの頃。

こうした「近代UKユース・カルチャー」のDNAをそのまま刷り込んだような映像作品なせいか、
この映画は今もイギリスで普遍のカルト・クラシックとして高い人気を誇り、
クリスマスやイースターなどの連休期には必ずどこかの裏番組として
しばしば再放映されている。
去年は、この映画の出演キャスト全員が28年ぶりに再会&出席し、
ロンドンのアールズ・コートで「記念コンヴェンション」も大々的に催された。

因みに、
この映画の主人公ジミー役を演じている英俳優フィル・ダニエルズは、
あのブラーの”パーク・ライフ”でデーモンと一緒に掛け合いナレーションをしている人物としても有名。

数年前までのダニエルズは、
BBCの長寿下町TVドラマ『East Enders』にも
「20〜30年後の元モッズ/くたびれたオッサン」っぽい役で出演していて、
あの独特の「わびしさ加減」がまた格別だった。
児島由紀子の「ロンドン通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on