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    本日のジャパネク通信:感傷ベクトルに驚いた

    本日のジャパネク通信:感傷ベクトルに驚いた

    今日は感傷ベクトルを観た。
    将来が本当に楽しみなバンドだ。

    ナイーブな感性を叩きつける性急なロックバンド。
    でありつつ、苦み走った青春マンガを描くマンガ家、脚本家ユニットでもある感傷ベクトル。
    感傷ベクトルのふたりはどちらの手を緩めることもなく、キャリアを重ねてきて、マンガでは月刊誌の連載を、そしてバンドではメジャーデビューを勝ち取った。
    というように、その背景は特別だが、感傷ベクトルはとてもロックバンドらしいロックバンドだ。

    彼らは物語のような音楽を鳴らすというよりも、あるいは、音楽のような物語を書くというよりも、ロックらしいロックを鳴らし、そして、マンガらしいマンガを書く。
    それはそもそも彼らの中でリソースが切り分けられているからで、あくまでリソースをふたつ、エンジンをふたつ、デフォルトで持ち合わせているということなのだろうと思う。
    二刀流である。
    大谷翔平がまさに当たり前のように投げて打ち、あまりに本質的な「野球」を当たり前の営みとしてやっているように、感傷ベクトルもまた、普通にロックをやり、普通にマンガを書いている。そう見える。

    しかし、彼らはときに、ナイーヴな自意識を衝動的にかき鳴らすようにエレキギターを弾き、ペン裁きや物語のテンションを上ブレさせる。
    それがあらゆるアウトプットに共通しているポイントである。
    つまり、胸の中にある「この感じ」はいつも共通している、だからこそ、表現する手段はなんでもいいし、なんでもできるし、どれも好きで、どれも選びたい。
    好きなんだからどれも選べばいいじゃないか。
    このニュータイプが見せているのはそういう「普通」なのだ思う。

    そして、その意味において、感傷ベクトルは青春とナイーヴィティと衝動を描くことを、あらかじめ、あまりにまっすぐに選んでいるのだと思う。
    彼らはそういう、迷いのない、「迷い」の表現ができている。
    ときにヤケクソのテンションを露わにする。それがとてもいい。ロック的にすごくいい。
    今日初めてライヴを観たが、とてもロックバンドらしいロックバンドだと感じた。

    JAPAN誌面でもまた書こうと思います。
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