なぜ世界はUffieに萌えるのか
2010.04.25 19:30
Ufiieのデビュー・アルバム『Sex Dreams and Denim Jeans』がいい。まず、タイトルがいい。セックスとドラッグとロックンロールではないのである。セックスは同じだけど、ドリームとデニムなんである。
コンビニのブックスタンドを見れば、いわゆる男性ファッション誌と呼ばれる雑誌はせいぜい10誌くらい。女性はというと、どれくらいあるのだろう、40誌くらいはあるんじゃないだろうか。コスメまで加えると、もっとある。男と女の違いについてはいろいろ言われるけど、この陳列棚を見るだけで、両者はまったく違うものだとよくわかる。
わかるけれども、じゃあ音楽の世界において、それもロック・ミュージックの世界において、そういう平易で決定的なレベルでもってオンナであるようなアーティストなり作品なりがあったかといわれると、どうだろう。よく考えると、実はそんなにないことに気づくだろう。コンビニの壁を占拠する、圧倒的な「オンナノコ」的なものが、そのまま、ロック・ミュージックの世界に実現したことは、なかったのではないだろうか。シャツとパンツがあれば外に出られる男と、実にいろんなモノをあっちゃこっちゃに着込んでいて、そのうえハイ・ジュエリーと100均のプラスチック・リングを無造作にミックスできるオンナノコ。仮にオンナのロックはあったとしても、オンナノコのロックはなかったのである。
『Sex Dreams and Denim Jeans』でのUffieは、つねにアヒル口でしゃべっているようである。男たちがそうしたように、あるいは男たちに聴こえるように、叫んだりしないし、あるいは、男たちが喜ぶように囁いたり、泣いたりもしない。さらに、オンナたちにむけても、励ましたりもしなければ、嫉妬したりもしない。かといって、ファンタジーにいるのでも、ない。どこまでもリアルな、匂いでもしてきそうなこの世界は、あるようでなかった世界である。Uffieの新しさはそこだ。
サウンドも、彼女を取り巻くシーンのいいところをうまく抜き出しているけれど、それだけではない。というか、まるで女性誌のグラビアが脅迫神経的に押し売りするページからひょいひょいといくつかを取り上げて、ルールも無視した組み合わせで、ときにはダサい感じも入れたりして、完璧なスタイリングにしてしまった痛快さがある。そんなサウンドのまさしく「スタイリング」は、オンナノコのものなのだ。
ロック・ミュージックの世界に現れた、おそらく初めてのオンナノコ。世界がUffieに萌えるのは、仕方のないことなのである。