ビョークも!コートニーも!アンジーも次々にセクハラ告白。ワインスタインのセクハラ暴露でハリウッド激震。タランティーノもコメント


先週「The New York Times」と「The New Yorker」誌が立て続けに、ハリウッド一の権力者のひとりであり、クエンティン・タランティーノ映画はすべて制作、オスカー作品には欠かせないハーヴェイ・ワインスタインのセクハラを暴露し、ハーヴェイが自らの会社ワインスタイン社をクビになるという事件が起きた。

「The New York Times」では、アンジェリーナ・ジョリーや、グウィネス・パルトロウなどが女優として駆け出しの頃に、ハーヴェイ・ワインスタインにセクハラを受けたと告白。ニューヨーカー誌でもアーシア・アルジェントなどが20代の時にレイプされたことまで告白している。

それを受けて、現在世界中の女優達がハーヴェイにセクハラされたことを一斉に告白し始めている。その数は、毎日増え続けていて現時点では50人以上にのぼる。アメリカのアカデミーは、緊急に会議を行いハーヴェイの会員としての権利を剥奪した。
https://www.nytimes.com/~
https://www.newyorker.com/~
http://www.vulture.com/~

カーラ・デルヴィーニュやレア・セドゥまでセクハラにあったことを告白していて、それがいかに最近まで続いていたのか分かるし、被害者は共通して、まだ駆け出しの頃にホテルに呼ばれセクハラを受けている。しかし、ハーヴェイ・ワインスタインが業界であまりに権力があるため、怖くてこれまで語れなかったと言っているのでさらに悲痛だ。グウィネスなども当時の彼氏だったブラッド・ピットに言って、ブラピが直接ワインスタインに抗議に行ったそうだが、その直後、他の人に言っては絶対にいけないと言われたそうだ。

ただし、さすが我らがコートニー・ラヴ。2005年にレッドカーペットで、「若い女優へアドバイスはありますか?」と訊かれて、「ハーヴェイ・ワインスタインにフォーシーズンズホテルでパーティーがあるからおいで、と言われても絶対に行かないように」と答えている勇敢な映像が発掘されている。

ちなみにコートニーは、ハーヴェイからの被害にはあっていないそうだ。ただし、エージェントから、絶対に彼の悪口は言ってはいけないと口止めされたという。

さらに、女性達が次々に告白するのに影響されたと言って、なんとビョークまでが、デンマークの映画監督にセクハラを受けたことをFacebookで明かしている。デンマークと言うと、彼女が主演した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の監督だったラース・フォン・トリアーを思い出してしまうのだが??当時は、彼にはいじめられたので、もう二度と女優はしたくないとも言っていたが。

https://www.facebook.com/bjork/posts/10155777444371460
以下全文訳。

「ネット上で色々なところから女性が声を上げているのにインスパイアされたので、私もデンマーク人の監督との経験について話したいと思う。
私は世界でも最も男女平等と言える国の出身だし、当時は自分で頑張って確立した音楽シーンでの独立した強い立場を得ていたけど、
女優業界における私の屈辱とセクハラを受けるという立場においては弱く、それは当たり前のことで、監督がそれを変える気もなければ、働いている何人もの人達もそれができるように仕向けたりするということはかなり明確に分かった。

監督は、女優を触ってよくて、女優をセクハラしてよくて、映画業界も組織としてそれを許可しているというのは、世界的に共通していることが、すぐに分かった。私が、監督を何度も拒否すると監督は機嫌を損ね、私を罰した。そして彼のスタッフ達を使い、まるで私のほうが難しいことを言っている人に見えるように仕向けた。

だけど私自身の強さと、私のスタッフの素晴らしさ、そして私自身が女優業界で野心を持っていたわけではなくて、失うものは何もなかったから、そこから立ち去り、そして何年もかかって立ち直った。だけど、心配なのは、その同じ男と仕事しているその他の女優達はそれができないということ。

しかも監督はその駆け引きを十分に認知した上でやっていて、だから彼がその後に作った作品が、私との経験を元に作っていることは明らかだった。なぜなら、私が彼を拒絶して、それを認めなかった最初の人だったから。

ただ、思うに、彼は、私との対立の後、彼が仕事する女優達とより公平で意味のある関係性を築くようになったから、そこには希望がある。

そしてこの声明文が、世界中の女優と、男優を、支援することになればいいと思う。

これを阻止しよう。

今世界に変化の波があるように思うから。

思いやりとともに

ビョーク」

ハーヴェイ・ワイスタインがこれまで制作してきた映画は数限りなく、『セックスと嘘とビデオテープ』から、『イングリッシュ・ペイシェント』、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』、『ギャング・オブ・ニューヨーク』、『シカゴ』、『コールド・マウンテン』、『英国王のスピーチ』、『ザ・マスター』など。さらに、クエンティン・タランティーノの作品はすべて制作している。そこで、タランティーノが、最近コメントを出して話題となった。


「先週、僕の25年来の友人であるハーヴェイ・ワインスタインに関することが明るみになり、唖然とし、心が張り裂けそうな思いだ。自分のこの苦痛と、感情と、怒りと、思い出を消化し、これに関して正式なコメントを発表するまでには、あと数日かかりそうだ」

また脚本家としてのデビュー作を制作してもらい、オスカーまで受賞したマット・デイモンとベン・アフレックも、ハーヴェイに抗議する内容のコメントを出してはいるが、ベン・アフレックは彼自身のセクハラが明るみに出たり、マット・デイモンはNYタイムズ紙の記事を数年前に一度もみ消そうとしたと言われている。事実ではない、と否定しているが。また、オリバー・ストーン監督が、ハーヴェイを擁護するようなコメントをしたため、ストーン自身のセクハラも明るみに出たりしている。

ジョージ・クルーニー、レオナルド・ディカプリオ、ライアン・ゴスリングなど男優達は、ハーヴェイの行いを徹底的に非難するコメントを発表している。ただし、微妙なコメントで現在話題となっているのがウディ・アレンだ。「BBC」のインタビューに答え、「この事件に巻き込まれた女性達にとってはかわいそうな悲劇であり、ハーヴェイの人生がめちゃくちゃになってしまい残念に思う」。

さらに、女性が告白することで、事態が「改善すればいいと思う」と。ここまでは良かったが、「ただこれが魔女狩り的な雰囲気を生み出し、男性が会社で女性にウィンクしただけでも、即訴えるような空気に繋がらなければいい」と言ったので、反発を受けている。というのも、そもそも、アレン自身は、娘を性的に虐待したと訴えられたことがあった。無実となっているが。また、実はニューヨーカー誌で記事を書いたのは、アレンの息子で、彼は、父が姉に性的虐待をしたと訴えていた超本人でもある。彼が今回暴露記事を書いたのも、父を通して知ったハリウッドの風潮が許せなかったからだろう。

さらに、この問題の最も重要な点は、これがアメリカの現在の大統領への問題追求にまで発展するかもしれないということ。彼自身が、選挙期間中に女性に性的暴行を加えるのは当たり前だというようなことを発言している映像が公開されたからだ。ヒラリー・クリントンなどはさっそくイギリスのチャンネル4のインタビューの中で、「アメリカは、女性に性的暴行を加えたことを認めている人を大統領に選んだ」と語り、「だからこの問題には今後も指摘するべきことが多く、それがいかに人にダメージを与えるのかを訴え続けなくてはいけない」と語っている。
https://www.washingtonpost.com/news~

個人的にも、20年以上も続いて来たハーヴェイ・ワインスタインのセクハラが今になって表沙汰になったのも、女性の権限を奪い、女性を尊重しない大統領が選ばれたことへの女性達の反発なのだと思っている。最近同じ様に、共和党寄りのTV番組を作ってきたことで有名な「FOXニュース」のトップがセクハラで訴えられてクビとなったし、またその看板キャスターも同様にセクハラを訴えられてクビとなるという大事件が起きた。

また、今年のエミー賞を受賞し絶賛された作品の多くが、例えば、ニコール・キッドマンが主演している『ビック・リトル・ライズ〜セレブママたちの憂鬱〜』や、エリザベス・モスが主演する『The Handmaid's Tale』がアメリカでこれだけ旋風を巻き起こしているのは、やはり現在の政権下を生きる女性達の反発を示していると思うのだ。個人的にも両シリーズとも傑作だと思う。これから益々、女性の反発は盛んに行われるようになると思うし、それをアートに表現した優れた作品が生まれることになると思う。
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