リナ・サワヤマの『ジョン・ウィック4』の演技が素晴らしい。今後ハリウッドで引っ張りだこに違いない。キアヌと監督はGoogleで見つけたMVで決めたそう。ガガ、デュア・リパ、ビリーも最近は女優業。

pic by STEWART COOK

アメリカで3月24日に公開されたキアヌ・リーヴス主演の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』。過去4作で最高の評価を得ているばかりか、公開週の興行成績も過去最高を記録。現在は世界で2450万ドルを突破したので、間違いなく、過去最高の興行成績も記録すると思う。私もすでに観たけど、実際、本当にこれまでの4作の中で最も良くできている。予告編はこちら。

それで驚いたのは、この作品で映画に初出演したリナ・サワヤマの演技が素晴らしいこと。しかも、監督のチャド・スウィエルスキはGoogleで彼女を見つけて、キアヌとM Vを見て決めたというのだ。

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彼女の演技は、長い間日本の俳優で彼女のような人が求められてきたけど、なかなかいなくて、とうとう見つかった!と思えるようなもの。今後彼女へのハリウッドからのオファーがたくさんくるのは間違いないと思う。何が素晴らしいかと言うと、西洋の人が考える日本的なものを娯楽大作の中でどう見せれば良いのかちょうど分かっていること。このポスターでなんとなく分かってもらえるのでは?


文化の橋渡しができているのだ。しかも、彼女自身がその両方の文化に育ったから、それが自然にできているように見えて適役。その上、これが初出演とは思えない、もちろん演技が上手いしアクションもできている。色々な意味で素質があったということだと思う。それがこの映画のおかげで引き出されているという感じだ。主役は当然キアヌなので、出番が長いわけではないけど、短い中で彼女の役割をしっかりと果たして、しかも未来を期待させる演技をしている。

pic by STEWART COOK

彼女の役は、真田広之が演じるジョン・ウィックの旧友シマヅの娘アキラ。映画出演のきっかけについて、BBCラジオのインタビューで答えている。

「始まりは、私のマネージャーにチャドからEメールが来て、私と話したいと言うことだった(笑)。それで”えっ、マジ?! なんで『ジョン・ウィック』の監督が私と話したしたいわけ?”って思ったんだけど、結局電話がかかってきて、『この役のキャスト探しているんだけど、まだ見つかっていないんだ』と。それで、監督は、私のことGoogleで見つけたと言うの(笑)。ただ、笑えるのは、私はMVを作る時に、自分の演技のポートフォリオを作るみたいなつもりで作っていたってこと。だからそれが結果的にはうまくいったというわけ。彼が『僕とキアヌで君のM Vを見ているんだけど、”XS”では振り付けをしていて、”バッド・フレンド”では、スタントトレーニングもしていますよね』と言われたので、『うまくいった!』と思った」

こちら監督とキアヌが見た”XS”。

“バッド・フレンド”

さらに、リナはLAのプレミアの際のインタビューの中で、こうも話していた。

「監督のチャドから電話がかかってきて、何をやるのかを説明してくれた。『すごく大変なトレーニングがあり、キアヌについていかなくてはいけなくて、長いシーンがあるけど、やりたいですか? それと、これから数ヶ月空いていますか?』って。それで私のスケジュールは、それまでの2年間全く空いてなかったのに、その時だけちょうど空いていて、だからそれは運命だったのだと思う。その電話がかかってきてから数日後には、ベルリンに行き、トレーニングを開始したから」

また自分の演じた役アキラについては。

「彼女には深さがあって、彼女がなぜああいう人になったのかの理由がある。でも、そんな自分を彼女自身が好んでいるのかどうかはよく分からない。それが彼女の面白いところだと思う。それから、彼女が登場するまでは、どの役も『ジョン・ウィック』の世界観にすっかりハマっているけど、彼女はその世界観に彼女なりに反発している。そこが好きだった」

キアヌとの出会いについて。

「キアヌに最初に会ったのは、ベルリンのジムで、そこでトレーニングを開始して、撮影までの5週間でキアヌと毎日ジムで一緒にトレーニングしていた。もちろんキアヌはそこで、もう何週間も何ヶ月もトレーニングしているのは明らかだったけど。つまり、毎日彼のすぐそばでトレーニングしていたわけだから、本当にクレイジーだよね。彼は本当にナイスで、みんなが言っていた通り、すごく謙虚な人で、優しくて、落ち着いていて、すごく禅な人で、平穏で、すごく良いアドバイスもくれた。どうやってアクションシーンをやり抜けばいいのかも教えてくれたし。彼は本物だから。本当に最高だった」

真田広之との共演について。

「真田さんは素晴らしい人で、もちろん最高の俳優でもあり。彼は自分が演技していない時ですら、私を指導してくれたし、私と一緒に練習もしてくれた。私と一緒に台本を毎日読んでくれた。『もしやりたかったらやるから言って』と言われて、本当にやったの。心が広くて、優しくて、一緒にロビーを歩くシーンがあるんだけど、それが私が一番好きなシーンだった。何度もリハーサルしたから。それで撮影が終わるごとに、『もう少しこうしたら』と言うようなことも教えてくれた。すごく楽しかった。彼がいなかったら、どうすればいいのか分からなかったと思う」

この映画が、初出演だったことについて、「監督はじめ、キアヌや真田さんが優しかったので本当にラッキーだった」と言っていたけど、それは本当にそう思う。いきなりこんな大作のしかも名優たちが出て、さらにハリウッドでも最高レベルのアクションがある作品の中に飛び込んでいって、彼女が最大限の力を発揮できているのはこの監督、俳優たちのおかげでもあると思う。

pic by MARION CURTIS / STARPIX

ミュージシャンとしては、映画の中で使われる新曲も発表している。

今後、絶対にハリウッドからオファーが殺到すると思うから楽しみだ。あ、そう言えば、この映画の日本公開はなんと9月。まだまだだけど、待つ甲斐があるので楽しみにしてください!


それでふと思ったけど、最近ミュージシャンたちの俳優業が続いている。これは、何も今始まったことではないので、珍しいことではないけど。書き出してみると、まず一番新しいのが、

1)デュア・リパ!今日発表されたばかりだけど、超期待の『バービー』に出演していることが分かった。
マーメイド・バービー役みたいだ。

この作品は、グレタ・ガーウィグ監督で、マーゴット・ロビーが主役のバービーを演じ、ライアン・ゴズリングがケン役のコメディ映画。バービー主役でどんな映画作るの?という感じだが、今日予告編も公開され、これがめちゃくちゃ面白そうなので超期待したい。


予告編はこちら。アメリカでは7月21日公開。


2)レディ・ガガが『ジョーカー2』でハーレイ・クイン。
なんと偶然レディ・ガガは、マーゴットが前回演じたハーレイ・クインを『ジョーカー2』で演じる。現在NYで撮影中なので、彼女のハーレイ・クインの姿がすでに公になってしまった。マーゴットのハーレイが非常にポップでカジュアルだったので、ガガは、黒と赤でシンプルかつシックなハーレイとなっているのがまず興味深い。ミュージカルを撮影しているところなども目撃されている。これも楽しみだ!


3)ビリー・アイリッシュが、ドナルド・グローバー制作のシリーズで演技に初挑戦。
ビリー・アイリッシュは、両親も俳優だし、兄も母との作品で俳優デビュー済みだが、ビリーだけまだ演技をしていなかった。

しかし、満を持して尊敬するドナルド・グローバーが手掛けたAmazon Primeシリーズ『キラー・ビー』の第4話に出演。女性エンパワメントのカルトリーダー役を演じている。不気味だが、ある意味ピッタリ。もう配信しているので観てみて。なんと、オバマ元大統領の娘さんのマリア・オバマも脚本家として参加している。


4)ザ・ウィークエンド
ジョニー・デップの娘のリリー=ローズ・デップと共演。HBOシリーズ『The Idol』で本格的に俳優に挑戦。

ザ・ウィークエンドは、自分を演じる役で、『アンカット・ダイヤモンド』に出演済みだが、今回は初めて本格的に演技に挑む。音楽業界の舞台裏を描いた内容になりそうで、彼なりの鋭い批判や、見解が含まれている気がして、それが楽しみなのだが。

実は最近、この作品の制作について暴露され問題となっていた。もともと女性視点で描かれていてそれが良かったのに、ザ・ウィークエンドの指示により、かなり男性視点に書き直しされているというのだ。だとしたらちょっとがっかりだが、観てみないと分からない。ザ・ウィークエンドもリリー=ローズも否定している。コーチェラでヘッドライナーのBLACKPINKのジェニーも出演。今年放送開始予定。ティーザーはこちら。


5)バッド・バニーは、地道に活動。
コーチェラと言えば、同じくヘッドライナーのバッド・バニー。ブラット・ピットの『ブレット・トレイン』にチョイ役で出ていたけど、音楽活動とは違い俳優活動は地道に続けている。今年のサンダンス映画祭で上映されたインディ映画、ガエル・ガルシア・ベルナルが主演の伝記映画『Cassandro』にも再び小さい役で出ていた。

Courtesy of AMAZON PRIME VIDEO

ただ小さいとは言え目立つ役だし、しかも彼が大好きなプロレスに関わった作品なので出たのだろう。これもAmazon Primeだが配信開始はまだ発表されていない。彼は、Netflixがシリーズ化するベストセラー”They Both Die in the End”のプロデューサーも務めている。主人公はゲイのティーネイジャー2人で、LGBTQ+コミュニティの引き続きサポートしている。



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