毎年恒例、北米最大規模のトロント映画祭が、9月5日に開幕した。毎年ここで最高の賞である観客賞を受賞すると、アカデミー賞のノミネートは確実となるので注目されている。
この映画祭では、音楽関係のドキュメンタリーなども世界初上映されることが多い。例えば去年は、トーキング・ヘッズが、21年ぶりにメンバー4人が勢揃いして『Stop Making Sense』の4K IMAX上映を行ったり、ポール・サイモンも登場してドキュメンタリーが上映されたりした。
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今年は、ファレル、アンダーソン・パーク、ロビー・ウィリアムズなどが単なるドキュメンタリー映画ではなくて、よりオリジナリティある作品を上映する。またエルトン・ジョン、ブルース・スプリングスティーンなど大御所から、カナダ出身のティーガン&サラのドキュメンタリー映画なども世界初上映される。アーティストも映画祭に登場することになっているのでそれも楽しみだ。以下映画の概要など。
1)ファレルのレゴで作られた自伝映画『Piece by Piece』
アーティストの自伝的ドキュメンタリー映画は昨今流行とも言えるけど、ファレルはそれをレゴで作ったのだ!さすが。それにファレルならレゴでぴったりな感じもする。すでに予告編も公開。これを見れば分かるけど、スヌープから、ジェイZ、ケンドリック・ラマーなどがかわいいレゴになって登場し、本人達が声で出演しているので超楽しみだ。またファレルは新曲も書き下ろしている。
監督は、モーガン・ネヴィル。『バックコーラスの歌姫たち』から、『Keith Richards: Under the Influence』などを手掛けている。
驚くのは、最近彼はこの後にもう1本、ミッシェル・ゴンドリー監督で、今度は若かりし頃をテーマにしたなんとミュージカル映画も制作すると発表されたこと。しかも音楽を手がけるのは、『ラ ラ ランド』、『グレーテスト・ショーマン』、『ディア・エヴァン・ハンセン』などで手掛けた大ヒットメーカーのベンジ・パセックとジャスティン・ポールだ。
ルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターになってそれだけで忙しいので、それ以外の分野ではしばらく作品を発表できないだろうと思っていたのに、その逆だった。むしろ壮大に世界観を広げ、加速している感じだ。
2)ブルース・スプリングスティーンのドキュメンタリー『Road Diary: Bruce Springsteen and The E Street Band』
ブルース・スプリングスティーンは、トロント映画祭の常連とも言えるが、今回のドキュメンタリーは、よりバンドの成り立ちや関係性をフォーカスした内容。監督は、Thom Zimmyで、これまでトロント映画祭でも上映されてきたドキュメンタリー映画『The Promise: The Making of Darkness on the Edge of Town』、『Western Stars』なども手がけてきた。今日ちょうどこのドキュメンタリーがアメリカではディズニープラス/HULUで10月25日に配信されると発表された。このボスのコメントによると、最新ツアーを中心に、リハーサルなど舞台裏も含めて追った内容になっているようだ。日本での配信情報も分かったらお知らせします。
3)エルトン・ジョンのドキュメンタリー『Elton John: Never Too Late』
エルトン・ジョンも最近インスタでコメントしていたけど、このドキュメンタリー映画は、「思い出や音楽、自分の人生を形成した瞬間を描いた特別な旅」を描いたもの。これまで未公開の過去の映像から、語ってこなかったようなことまでを打ち明けた、過去と未来を見つめた内容。監督は、最近ではビリー・アイリッシュのドキュメンタリー『Billie EIlish: The World’s a Little Blurry』を手掛けたR.J. Cutler と、エルトン・ジョンの夫であるDavid Furnishだ。エルトン・ジョンは長年公にいたアーティストだけど、今回夫が監督でもあることで、これまで引き出せなかったような側面が描けたのかもしれない。去年終了したラストツアーの中でも、LAで開催されたドジャー・スタジアムのショーがハイライトとして出てくるようだ。
この作品は、アメリカでは12月13日からディズニープラスで配信が決定している。日本での配信も分かったらお知らせします。
ちなみに、エルトン・ジョンは、最近、インスタのポストで今年の夏酷い感染により視力を多く失ったことを報告している。
現在回復には向かっているそうだけど、時間を要するようだ。心配だ。ちなみに、トロント映画祭の上映には、現時点では来ることになっている。もし本当に来れたらレポートさせてもらいます。
4)アンダーソン・パークが監督、共同脚本、主演した『K-Pops』
アンダーソン・パークの作品は、自伝ドキュメンタリーではなくて、フィクション。しかも何から何まで自分で担当。彼の母が韓国で生まれていることにインスパイされているので、伝記的側面はあるし、なんと彼の息子さんも出演。彼が演じるのはミュージシャン。韓国に行って、Kポップスターの番組で仕事するように友達に勧められる。そこで昔の彼が付き合っていた女性と再会し、なんと彼女に自分の子供が生まれていたことを知る。そこで息子と離れていた時間を取り戻そうとする。
めちゃくちゃ面白そうだ。
5)ロビー・ウィリアムズは自分が猿になった伝記映画『Better Man』。
すでに他の映画祭で上映済みで話題となっているロビー・ウィリアムズの伝記映画『Better Man』。
初めて観た人達が驚いたのは、ロビー・ウィリアムズだけが人間ではなくて、CG の猿になっているとのこと。しかしこれがぴったりでハマっていて面白いと言うのだ。これも楽しみにしたい。
6)ティーガン&サラのドキュメンタリー『Fanatical: The Catfishing of Tegan & Sara』
このドキュメンタリーが興味深いのは、彼女達のアーティストとしての人生を描きながら、LGBTQコミュニティでの活動にも触れ、またソーシャル・メディア上で彼女達を装うって偽のアカウントを作る人などが現れ、それと戦ったことなど。非常に繊細で今的な問題も描かれていることだ。これもすでにHULUでの配信が決まっていて、アメリカでは10月18日から見られる。
7)この他、アンドレア・ボチェッリのドキュメンタリー『Andrea Bocelli: Because I Believe』なども上映される。初日の今日は、ベン・スティーラーのコメディ『Nutcrackers』や、オーランド・ブルーム主演の『The Cut』なども世界初上映された。この後、今年のオスカー候補作が軒並み上映される。
https://x.com/aaakkmm/status/1831920115073646775https://x.com/aaakkmm/status/1831917162380038350
今日は一般上映で、すでに他の映画祭で上映されてすごく評判の良いデミ・ムーア主演『The Substance』や、黒沢清監督『Cloud クラウド』もあった。しかし、2本とも何度チケット売り場に行っても完全に売り切れていたようで入れなかった。トロント映画祭は、プレス用の試写もあるのだけど、他の映画祭と比べて観客と一緒に観れる映画が多い。観客の反応を知るために可能な限り観客との上映を観るようにしている。引き続きレポートさせていただきます。
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