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    ハイム、チャペル・ローン、リゾ、ルーシー・ダッカス、ジャパニーズ・ブレックファストなど春を告げるような新曲を次々に発表。今年も女性、クィアアーティスト活躍の年となるか?

    ハイム、チャペル・ローン、リゾ、ルーシー・ダッカス、ジャパニーズ・ブレックファストなど春を告げるような新曲を次々に発表。今年も女性、クィアアーティスト活躍の年となるか?

    今年のグラミー賞を例にするまでもなく、ここ何年も女性、クィアアーティストの活躍が目立つアメリカ音楽シーン。レディー・ガガが、キャリアでも最高か思えるような素晴らしい新作『メイヘム』を発表したばかりだが、今週は、それに続けとばかりに、ハイム、チャペル・ローン、リゾ、ルーシー・ダッカスなど待望の新曲が次々に配信されている。しかも、どれも春を感じさせるような軽やかでパワフルな曲が多く、かつキャリアの新章を告げるような新しいサウンドの曲になっている。以下可能な限りご紹介したい!


    1)ハイム“Relationships”「レッチリ のように作った」?!


    待望2年ぶりの新曲でなんと様々な意味で新鮮な風が吹く曲。このMVもそれを象徴していて、映像もファッショナブルだし、シャープだし、これまでのポール・トーマス・アンダーソン監督が撮ってきたものとは違う軽やかさと新鮮さがある。

    曲は、タイトル通り、“恋愛関係”の複雑さを歌う歌詞だが、まずボーカルが軽やかで新しい。実は、2017年『Something to Tell You』の頃に作った曲で当時の90年代R&Bサウンドが戻っている。今回大きく違うのは、ダニエルが長年付き合っていたバンドのプロデューサーでもあったAriel Rechtshaidと別れたこと。なので、彼がプロデュースしていない初のアルバムとなる。ダニエル曰く、Arielとの作業はじっくり時間をかけて作るものだったらしいのだけど、今回セカンドよりプロデューサーの1人として参加してきたロスタム・バトマングリがより大きな役割を担った。彼が「(レッド・ホット・)チリ・ペッパーズみたいに作ろうと思った」とi-Dで語っている。つまり、全員で一緒にスタジオでライブ感覚で作っていたと言うこと。


    アートワークも3人が正に外で軽やかに弾けた感じだし、アルバムを聴くのも待ちきれない!

    2)チャペル・ローンの「レズビアン“カント”リーアンセム」 “The Giver”


    ハイム、チャペル・ローン、リゾ、ルーシー・ダッカス、ジャパニーズ・ブレックファストなど春を告げるような新曲を次々に発表。今年も女性、クィアアーティスト活躍の年となるか?

    去年大ブレイクし、グラミー賞で新人賞も受賞したスーパースター。2024年4月“Good Luck, Babe!” 以来の待望の新曲。予告していた通りの「カントリー」ソングで、フィドルとバンジョーが全編通して鳴り響く気分も高揚するカントリーのアレンジ。そう言う意味ではチャペル・ローンの新境地だけど、強烈なポップ・ソングと言う意味では彼女のこれまでのヒット曲に通じる。

    「私は途中で諦めるカントリー・ボーイとは違って、最後まで仕事をやり遂げる」と歌う彼女曰く「レズビアンカントリーアンセム」だ。

    すでにインタビューにも答えていて、
    「自分のことをミッドウェストプリセスと呼ぶからには、カントリーミュージックは無視できない。それが公園にいてもスーパーマーケットでも流れていた音楽だから。ただ、自分がジャンルを超えてカントリー好きの人達にむけて、『カントリー作ったのよ、聴いて』と思って作った訳ではなかった。レズビアンカントリーソングは面白いと思ったから作った。カントリーは、ノスタルジアがあり、夏のような楽しさがある。フィドルがあってバンジョーがあるとカントリークイーンのように感じられる。それから普通のポップミュージックにはない自由が感じられる」。これはハイムの新曲にも通じるけど、風通しがよく軽やかに新境地を謳歌しているような曲だ。


    彼女の場合はプロデューサーはこれまでと同じくDan Nigro。

    また、パリコレに初めて招待されたと行っていたけど、彼女のファッションこそ最も注目されていたハイライトのひとつだった。



    3)リゾは、よりダークな“Still Bad”


    ディスコポップソングだが、リゾの弾けるばかりのポジティビティ100%の最近の曲とは違いダークな要素が入っているのが新しい。
    「彼はいらない、酒が欲しい、この痛みをシャンペンに変えるから」と苦痛を乗り越え自分を励ます曲であると言う点ではリゾらしい。

    4)ルーシー・ダッカス、「大人になった正直さ」の新作

    ハイム、チャペル・ローン、リゾ、ルーシー・ダッカス、ジャパニーズ・ブレックファストなど春を告げるような新曲を次々に発表。今年も女性、クィアアーティスト活躍の年となるか? - pic by Shervin Lainezpic by Shervin Lainez

    “Best Guess”


    “Ankles”


    “Talk”


    ソロ作としては高評価だった『Home Video』から4年目にして、ボーイジニアスとの大ヒット作『the record』を挟んでの超期待作。プレスリリースによると『Home Video』は子供時代、思春期を探求した作品で、今作は大人になることを決意した作品。セクシャリティやロマンスをこれまでにない正直さでアプローチしている。また「何を作り上げるためには何かを破壊しないといけない。だから私は本当に美しい人生を破壊した」と語っている。アルバムのタイトル『Forever Is A Feeling』も良いなと思う。

    大事なのは参加アーティストが豪華すぎること。

    Hozier, Phoebe Bridgers, Julien Baker, Blake Mills, Bartees Strange, Madison Cunningham, Melina Duterte

    5)大大期待のピンクパンサレス再始動!


    アイス・スパイスとのコラボで大ブレイクし、フェスに出演すると昼間でもフェス最高かという観客を集めていたピンクパンサレス。しかしあまり急激に観客を増やしてしまったから、体調を崩して去年途中でツアーを中止してしまった。そこからのカムバック。今年はすでにグラストンベリーの出演も決定している。現時点では新作の情報はないけど、楽しみに待ちたい。

    彼女とアイス・スパイスとチャペル・ローンの3人がパリコレの最前列だったのも最強。


    6)ジャパニーズ・ブレックファスト

    ハイム、チャペル・ローン、リゾ、ルーシー・ダッカス、ジャパニーズ・ブレックファストなど春を告げるような新曲を次々に発表。今年も女性、クィアアーティスト活躍の年となるか?

    グラミー賞にもノミネートされた前作から4年。アルバムだけじゃなくて自伝も大ベストセラーとなり映画化も決定。才能が一気に開花した激動という言える年月を経ての新作『For Melancholy Brunettes (& Sad Women)』。Blake Mills がプロデュースし、初めて正規のスタジオでレコーディングというアルバム。前作で母を失った悲しみは全て吐き出しポジティブになれたと言っていたけど、アルバムタイトルにもそのまま表現されているけど、今作にはそれでも逃れられない人間の本質的な悲しみが描かれ、サウンド的にはより壮大になった曲。


    すでに来日が決まっているのが嬉しいし、


    なんと全世界で新作のリスニングが行われる。日本でもタワーレコードで3月20日に開催。
    詳細はこちら。
    http://bignothing.blog88.fc2.com/blog-entry-15962.html
    7)Doechii

    “Anxiety”


    グラミー賞でパフォーマンスいい、スピーチといい、間違いなく新たなファンを獲得したはずのDoechiiの曲。これは、もともと2019年にレコーディングされYouTubeで配信されたものを、再レコーディングし正式に配信。聴いてすぐに分かると思うけど、“Somebody That I Used to Know”がサンプル。

    チャペル・ローンと並び彼女のパリコレのハイライトとなってファッションセンスを光らせていた。


    8)エルトン・ジョン&ブランディ・カーライルによる「若いゲイキッズのためのアンセム」


    MVの監督はグザヴィエ・ドランにして、振付師はダミアン・ジャレ(『エミリア・ペレス』、『ANIMA』、『サスペリア』)という売れっ子の豪華な組み合わせ。

    ブランディは、「自分がゲイの女性で、エルトンはゲイの男性で2人とも家族があるし、夢が叶っている。だから若いゲイキッズのためにアンセムを書くのが良いのではと思えた。もっと大きくて、エレガントで、素晴らしい人生を追求するように。頑張れ! 誰にも邪魔されちゃダメ! と」

    エルトンは、「この曲が書けた時にアルバムの方向性が見えた」と語っている。

    ハイム、チャペル・ローン、リゾ、ルーシー・ダッカス、ジャパニーズ・ブレックファストなど春を告げるような新曲を次々に発表。今年も女性、クィアアーティスト活躍の年となるか? - pic by Peggy Sirota pic by Peggy Sirota

    現在のアメリカ政府は「性別は、男性と女性だけしか認識しない」と言い、すでにLGBTQコミュニティに不利な政策が実施されている。それと軽やかに戦う自由と反抗の曲が次々に生まれているように思う。
    中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
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