EW誌の早すぎるアカデミー賞予想。後半6本:ビン・ラディンに、サイエントロジーに、セックスセラピストまで


後半6本です。

7.『ホビット 思いがけない冒険』(日本公開12月14日公開予定)

当初2本と言われていたけど結局3部作になることが発表された『ホビット』シリーズ第一弾。『ロード・オブ・ザ・リング』の映画化が大成功だったピーター・ジャクソン監督作だけに、世界的に最も期待されている作品と言って過言ではない。

3D映像の1秒のコマ数を通常の24から48フレームで撮影したのがひとつ見所で、これはジェームス・キャメロンも『アバター2』を作る時に取り入れる予定と言っていた方法でもある。キャメロン曰く、48フレームにすることで映像が滑らかになり3Dを見ている時に起きる頭痛などが解消されるというのだ。心配なのは、『ホビット』のティーザー映像が公開された時に、大クレームが付いたこと。映像がきれいすぎて、『ロード~』のような神秘的な空間が台無しになってしまったとファンが心配したのだ。

しかし、ピーター・ジャクソンは、劇場で見れば絶対に分かってもらえるはずと断言していたので、彼の言葉を信じましょう!

日本語サイトはこちら。日本語の予告編もあります。
http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitpart1/

8.『LIFE OF PI』アン・リー監督の一大スペクタクル3D冒険物語に期待!

2002年にブッカー賞を受賞したヤン・マーテン原作『パイの物語』の映画化。原作は世界的大ベストセラーとなった小説で、インドの動物園経営者の息子パイの成長と冒険を描いた物語。16歳のパイが、日本の貨物船に乗り、インドからカナダのモントリオールへの向かう途中、嵐に遭い、遭難の危機に。なんとか救命ボートを見付けて助かるものの、一緒に助かったのがなんと、シマウマとオラウータンとハイエナとそしてトラという珍道中に。果たして動物達とどんな冒険が繰り広げられ、どのように生き残るのか?

パイは、動物についての知識が高いほか、宗教についても勉強している青年なので、見所満載の迫力映像の他、精神世界の成長にも触れられた内容の濃い物語になりそうだ!

パイを演じたのが、映画デビュー初、演技未経験の俳優なので、それも楽しみ。原作の『パイの物語』を読んでいない人は秋の必読書。
http://www.amazon.co.jp/パイの物語-ヤン-マーテル/dp/4812415330

迫力の予告編はこちら。

9.『The Sessions』:今年のサンダンス映画祭観客賞。実話に基づいた作品。童貞&セックスセラピスト?

歴史もの、3D大作、みたいな作品が続く中で少しほっとする、実話に基づいたインディ映画。物語は、クビから下が麻痺した詩人が、牧師と相談した結果、セックスセラピストを雇い、童貞を失うことにするという物語。予告編を見る限りでは、コメディタッチで描かれたヒューマンドラマなのだと思う。実話であるところが興味深いし、ヘレン・ハントがセラピスト役で、牧師がウィリアム・H・メイシーという名優ぞろいなのも楽しみ。

予告編こちら。

10.キャスリン・ビグロー監督によるウサマ・ビン・ラディン殺害『ゼロ・ダーク・サーティ』。

『ハート・ロッカー』の監督&脚本コンビによるウサマ・ビン・ラディン殺害までを描いたアクション、スリラー。我々の記憶にも新しいだけに、どれだけの衝撃を与える作品なるのか、超期待。とりわけ『ハート・ロッカー』が凄まじい作品だっただけに。

予告編

12.デヴィッド・O・ラッセルによるコメディ!『Silver Linings Playbook』

歴史ものでもなく、事実に基づいてもいなくて、しかも、この中で唯一とも言える現代コメディってだけで偉い!

しかも、主演が今をときめくジェニファー・ローレンスに、ブラッドリー・クーパーに、ロバート・デ・ニーロ。コミック小説を原作にラッセルが脚本、監督した作品。どんな内容かまだ良く分からないのだけど、予告編を見る限りではブラッドリー・クーパーが精神的にダメージを受けていて、旦那を亡くしたジェニファー・ローレンスに出会うことで、お互い幸せに向かっていく話……って書くと相当ダサい内容なんだけど、それが非常にピリ辛な感じで笑える内容になっている気がする。ソーキンじゃないが、非常に多い台詞とテンポが重視されているような感じなので、役者達の演技力と相性がスクリーンで見た時どうなっているのか、非常に重要であり、楽しみだ。

予告編

12.そして心の大本命ポール・トーマス・アンダーソン『ザ・マスター』

すでにしつこいくらいに紹介している、ポール・トーマス・アンダーソンの新作にして、サイエントロジーの創設者について描いたと言われている(本人は認めていないですが)、『ザ・マスター』。マスター=創設者を演じるのがフィリップ・シーモア・ホフマンで、彼に従い右腕となり、しかし、彼を疑うことになる若者がホワキン・フェニックス。このふたりの演技一騎打ちがまず楽しみだが、予告編を見る限りでは、ホワキンの演技が凄まじすぎて、このままオスカーをあげたいくらい。さらに、映像の美しさが半端ない。

また『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でも完全にキャラクターのひとりを演じていたと言えるジョニー・グリーンウッドによるサントラにも超期待。ちなみに、サントラはすでに予約できて、今予約すると1曲デジタルですぐに送られてくる。また、アルバムの発売日になったらデジタルで全曲届き、CDがあとから送られて来るシステム。こちらで予約可。
http://www.nonesuch.com/albums/the-master-soundtrack

それで実は映画はすでに何度か一般の観客のために上映されている。そこでちょっと心配なのが、その感想を読んでいると、「とにかく映像に圧倒された」という意見が多いこと。それは良いことなのだけど、ストーリーテリングに言及している感想が少ないのだ。もしかしたら、テレンス・マリックの『ツリー・オブ・ライフ』的な詩的映画になっているのだろうか? 個人的にはそれでまったく問題ないんだけど。

PTAは、この作品を、サイエントロジー信者にして『マグノリア』に出演したトム・クルーズに既に見せているそう。トム・クルーズの感想は「少し問題点がある」だったということ。

予告編はすでに5本あって、すべてがすでに短編映画のようだ。

最新の1本、「彼女が手紙をくれたんだ」編。
マスターが「人は誰でも恋をします。そして、恋は時に喜びを与え、そして同時に苦痛も与えるものです」と語ることに始まる。
そしてホワキンが「これまで誰も僕に手紙をくれたことなんてなかったのに、彼女は僕に手紙をくれたんだ」と手紙をくれた彼女のことを思い出して語っている。

2本目は、「船が見付からない」編。
これは、海軍の格好をしたホワキンがひたすら港で走り回っている映像で、「僕の船が見付からないのですが」と訊くと、「あっちだよ」と教えられて、また走るもの。

さらに、「絶望的に好奇心がある」編。
マスターとホワキン・フェニックスが出会い、共通点=「絶望的な好奇心」があることを見付け合う瞬間。

「喧嘩したのか?」編。
警察にホワキンが尋問を受けていて、何があったのか尋ねられているんだけど、ホワキンが覚えていなくて「まさか喧嘩したのか?」と逆に訊いている。

そしてこれが正式な予告編。

"The Master"フェイスブックページはこちら。
http://www.facebook.com/themaster.twc

とりあえずエンターテイメント・ウィークリーの選んだ12本は以上ですが、ここに入ってなくて気になる映画はまだまだたくさんあるので、状況が変わり次第お知らせします!
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