映画初出演の10代の少年と少女を起用し、ベルトリッチは車椅子から地下室で生活するふたり(異母姉弟の逃避行)を撮影した。あまりにも瑞々しい作品だったので、公開された時はまさか遺作になるとは思わなかった。
久しぶりの母国イタリア語による作品で、テーマ曲のように、デヴィッド・ボウイ“スペース・オディティ”のイタリア語版=“Ragazzo solo Ragazza sola”が使われている。
アカデミー賞作品『ラスト・エンペラー』では坂本龍一やデヴィッド・バーンの音楽があまりにも有名だが、この作品では冒頭からザ・キュアーの“ボーイズ・ドント・クライ”が流れて驚いた。つまりそういう作品だ。
“Ragazzo solo Ragazza sola”は、ボウイの“スペイス・オディティ”をイタリアのバンドがカヴァーし、歌詞は独自につけたもので宇宙飛行士=トム少佐の物語とは全く違う。タイトルも、“孤独な少年、孤独な少女”という意味だ。けれども、行き場のない夜を漂う孤独な浮遊感は、宇宙に投げ出されたトム少佐と同じで、とてもせつない。
孤独な少年よ 今からどこへ?
夜は大きな海
泳ぐのなら 手を貸すけれど
ありがとう でも今夜僕は死にたい
僕の目の中には 天使がいるから
とべなくなった天使が
『暗殺の森』や『1900年』など素晴らしい作品を本当にたくさん残してくれたベルトリッチ監督だが、このあまりに初々しい遺作は日本ではあまり知られてないようなのでぜひ観てほしい。(井上貴子)
下記は映画公開時のブログ↓
https://rockinon.com/blog/cut/81260