ボノボ:穏やかでエキゾチックな音の桃源郷を生み出すUKのDJ/プロデューサー ―― その新作完成。繊細さと力強さが同居する7th『Fragments』で、最充実期のボノボを堪能せよ!

rockin'on 2022年1月号 中面

レーベル:Ninja Tuneの屋台骨として20年に及ぶキャリアをひた走り、フロア直結型の上質なビートと、チルでエキゾチックな無国籍サウンドを武器に陶酔感溢れる音楽世界を生み出し続けてきたUK出身のDJ /プロデューサー=ボノボ。2017年の前作『Migration』はグラミーにもノミネートされ、その活動は長いキャリアの中でも今まさに最充実期を迎えていると言えるだろう。

そんな彼が、2022年1月14日に通算7作目のオリジナル・アルバム『Fragments』をリリースする。先行して公開されている“Rosewood”や“Tides(feat. Jamila Woods)”、“Ot omo(feat. O’flynn)”といった新作MVは、エレクトロニックな作風でありながらも極めて有機的でエモーショナルな手応えをもたらす、ボノボの音楽を見事に視覚化している。

ニュー・アルバム『Fragments』は、ボノボのバックグラウンドにあるハウスやUKガラージ、アブストラクト・ヒップホップの根源的なグルーヴを掬い上げながら、ワールド・ミュージック由来のフレーズやコーラス・サンプルで豊かに彩り、洗練されたポップ・ソングも配置してみせるという、今のボノボだからこその広い視界を余すところなく詰め込んだ傑作だ。繊細さと力強さの二面性が、アルバム全編に織り込まれている。とりわけ、幽玄のエキゾ・ソウル“Tides(feat. Jamila Woods)”は、遂に生み出されたスタンダードという趣で感慨深い。

また、本作にはジャミーラ・ウッズのほか、2020年のアルバム『Nectar』で存在感を決定的なものにしたシンガー・ソングライターのジョージ、現在のボノボの活動拠点であるLAのビート/ジャズ・シーンからミゲル・アトウッド・ファーガソンやカディア・ボネイら、才気溢れるアーティストたちも参加している。

2022年2 月からは米国各地やヨーロッパ、UKを回る新たなワールド・ツアーもスケジュールされているが、2020年春に果たされるはずだったボノボのキュレーションによるイベント「Outlier」の日本初上陸は、無念の中止となった。今後の来日公演にも期待したいところだ。 (小池宏和)



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