既報の通り、英国ロックの新世代を代表する7人組、ブラック・カントリー・ニュー・ロードが2 作目となる最新アルバム『アンツ・フロム・アップ・ゼア』を2月にリリースする。昨年のマーキュリー賞にノミネートされるなど称賛を得た前作『フォー・ザ・ファースト・タイム』からわずか1年。今作は、「最初の18ヶ月間」の成果を記録したデビュー・アルバムを経て、早くも次の段階に彼らが歩を進めたことを物語る作品であると言えそうだ。
ポスト・パンクやスロウコア的なシリアスで不穏なムードが印象的だった前作に対し、多彩に音を重ねた賑々しい楽器のアンサンブルや、フォークやトラッドに通じるソング・オリエンテッドなメロディが際立つ今作。
先行公開されたバロック・ポップ風の“カオス・スペース・マリーン”を始め、スティーヴ・ライヒに触発された“ブレッド・ソング”、ボブ・ディランへのアンサーという“ザ・プレイス・ウェア・ヒー・インサーテッド・ザ・ブレイド”など、演奏やソングライティングのスケールを大きく広げたことを収録曲は窺わせる。一方、持ち味のライブ感覚溢れる音作りは健在で、いわく「室内で生演奏をしているという感じを上手くとらえた」サウンドは、バンドのライブ・エンジニアを務めるセルジオ・マシェッコのプロデュースに負うところが大きいそうだ。
なかでも、実際のライブでもクライマックスを飾る“バスケットボール・シューズ”――12分を超えるソナタ形式のドラマとサウンドスケープは感動的で、圧巻の一語に尽きる。
そして、スポークン・ワード的なスタイルが特徴的だったアイザック・ウッドのボーカリゼーションは、より「歌う」方向へと大きく深化。さらに、他のメンバーが参加したコーラスやボーカル・ハーモニーも多くの楽曲で聴くことができる。
今作では曲作りの段階からスルー・ライン(※物語の要素をまとめる一貫したテーマ)が意識されたらしく、結果、すべての曲が繋がっていてひとつの大きな塊のような一体感があるのが醍醐味だと自負する。次号ではメンバーのインタビューをお届けしたい。 (天井潤之介)
ブラック・カントリー・ニュー・ロードの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。