「私に限らず、世界中の人たちが多くの歌を愛している。私たちがお互いに出会うことはないのかもしれない。
でも、話す言語が違っても、ザ・ビートルズの“レット・イット・ビー”が流れれば――あの曲が大好きな人とその場で一緒になれる。
それってパワフルだし、人間の歴史に語りかける、本当に大事なことだと思う」
USインディ・ロックが誇る至宝の歌声のひとつ、キャット・パワーことショーン・マーシャルの4年ぶりの新作『カバーズ』。ファンはご存知のようにこれで3作目のカバー集になるが、アメリカのルーツ・ミュージックに根ざしながらもオルタナティブな感性を備えた彼女の唯一無二な「再解釈」ぶりは、今回も知られざる名曲の数々に新たな光を当てフレッシュな情感を吹き込んでみせる。
トラッド曲や70年代以前のオールドスクールな楽曲が主体だった過去2作に較べ、フランク・オーシャンやラナ・デル・レイといったモダン・ポップの名手、そしてショーンの青春時代を忍ばせる選曲(ザ・ポーグス、ニック・ケイヴ、ザ・リプレイスメンツ。文句なしです!)も含む本作は「美しきさすらい人」のビタースウィートな痛みと癒しの歌に若い世代がアクセスするのに格好の作品ではないかと思う。
英ドミノに移籍して、はや2作目になるが、これまでクリエイティブなコントロールに関して様々な葛藤を経てきた彼女が「グランドマスター」の域に達したことを感じさせるのも実に嬉しいこのアルバムを軸に、音楽観や現代アメリカ人女性としての想いを訊いた。(坂本麻里子)
キャット・パワーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。