ファンに対しウィーザーの最も好きなアルバムはと問えば、恐らくここ日本では特に、デビュー作である通称『ブルー・アルバム(ウィーザー)』と2作目『ピンカートン』とで二分するのではないかと思う。
一方、バンドのキャリアにおける最重要作がどちらかと考えると、『ピンカートン』がパーソナルに振り切れた一回性の傑作であるのに対し、リヴァース・クオモにしか書けない極上の泣きのメロディにカーズのリック・オケイセックのプロデュースによってエッジと捻りが掛け合わせられたサウンドがバンドの礎となり続けていることをふまえれば、こちらは『ブルー・アルバム』に軍配が上がると言い切ってしまってもいいだろう。
そんなバンドにとってもファンにとってもかけがえのない金字塔のリリース30周年を記念し、20公演以上に及ぶ大規模な北米ツアーが9月4日から開始される。このツアーでは同作収録の全曲に加え、ファンに人気の曲やレア曲が演奏されることが発表されている。
さらに、このツアーにはザ・フレーミング・リップスとダイナソーJr.がサポートアクトとして同行する。コロナ禍での延期を経て2021〜22年に行われた「Hella Mega Tour」でのグリーン・デイとフォール・アウト・ボーイとの垂涎モノの並びもキャリアを通じてヘヴィさを増してきたウィーザーにとって必然性の感じられるものであったが、『ブルー・アルバム』を祝うにあたって彼らの起点である「オルタナティブロック」の先達2組を迎えた座組は、これまたあまりにも完璧だ。
バンドは既に今回の30周年記念の一環としてSpotifyスタジオでのライブ映像/音源を公開しており、ここでの年齢を増そうが決して失われない「蒼さ」を観て聴いてしまえば、否が応にもこのツアーへの期待が高まるというもの。昨年のフジロックおよび単独公演で来日したばかりではあるが、このコンセプト、この3組の揃い踏みで観たくならない方がどうかしている。ウィーザー単体での来日、あるいはツアーの配信などを含め、どのような形であってもこの「祭り」に参加できることを期待したい。(長瀬昇)
ウィーザーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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