日経ライブレポート 「フジロックフェスティバル’15」

今年のフジロックはとても充実していた。最新作が世界22ヵ国で1位を獲得したばかりのミューズ、世界の大型フェスでトリを務めるフー・ファイターズという超大物から、デッドマウスやFKAツイッグスといった新しい時代を担う注目の才能まで、2015年の今を感じられるラインナップだった。高齢者のためにはモーターヘッド、トッド・ラングレンのようなベテランのステージが用意されているのもフジロックの魅力だ。

またワンオクロック、星野源、椎名林檎という、邦楽フェスのトリクラスのアーティストをメインステージの主要な時間帯に置いたのも、今年の特徴だ。

ロックフェスは生き物のようなもので、常に環境の変化に対応して変わっていかなければ生き残っていけない。フジロックはそれをよく理解し、今のシーンをしっかり反映したキャスティングを実現している。

素晴らしいステージを本当にたくさん観ることができたが、個人的に強く心を動かされたのはトッド・ラングレンのパフォーマンスだった。今年67歳のベテラン・ロック・アーティストである。その彼がセクシーなコーラス・ダンスの女性2人を従え、ド派手なライヴを展開したのだ。

最新作「グローバル」は世界を覆うグローバリズムを批判するメッセージ・アルバムだ。そのシリアスなメッセージを伝えるには徹底してポップな装置が必要なのだ、という彼の決意が伝わって来る凄いステージだった。

フェスもアーティストも時代と向き合いながら変化することを感じられる今年のフジロックだった。

7月24~26日、新潟・苗場スキー場。
(2015年8月11日 日本経済新聞夕刊掲載)
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