日経ライブレポート 「サマーソニック&ソニックマニア2015」

毎年、旬なポップ・アーティストの優れたショーケースとして、的確なブッキングで楽しませてくれるサマーソニックと前夜祭的な存在のソニックマニアだが、今年もどのステージに行こうか迷う豪華なラインナップだった。

ブラック・ミュージックでは、ファレル・ウィリアムスとディアンジェロという、今を象徴するビッグネームが揃った。勢いのある女性ポップ・シンガーとしてアリアナ・グランデの存在感は圧倒的だったし、カーリー・レイ・ジェプセンも2万人以上入る屋内最大ステージ一杯の観客を前に熱いパフォーマンスを見せてくれた。新世代のロック・バンドとしてウルフ・アリスやダーリアを観ることができたのも収穫だった。

今年の大きな物語として印象的だったのは、エレクトリック・ダンス・ミュージックの今ということだ。今はEDMという形で表現されるが、その言葉に収まらない多様なエレクトリック・ダンス・ミュージックが今年のサマーソニックでは鳴っていた。

まずケミカル・ブラザーズやプロディジーというベテラン陣。彼らはEDMなんて言葉が存在する前から活動している。そしてゼッドというEDMシーンの中心にいるアーティスト、次の世代のマデオンやポーター・ロビンソンまで、今このシーンで何が起きているのかが分かる、とても凝縮した体験が得られた。

特にポーター・ロビンソンというソニックマニアで観た23歳の才能には驚かされた。EDMというジャンルに収まりきらない、日本のアニメソングを含む多様な音楽スタイルを吸収した独自の表現は、ポップ・ミュージックの未来を感じさせるものだった。

8月14~16日、QVCマリンフィールド、幕張メッセ。
(2015年9月2日 日本経済新聞夕刊掲載)
渋谷陽一の「社長はつらいよ」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする