日経ライブレポート「ザ・ウィークエンド」

CD音源などでイメージされる、どこか暗めでメランコリックなムードとは違う華やかでエンターテインメント性の高い楽しいライヴだった。

ザ・ウィークエンドは現在のR&Bシーンを代表するスーパースター。日本での知名度はそこまで高くないが、アルバムは最新作も前作も全米1位、たくさんのシングル1位曲を持つヒットメーカーだ。オーソドックスなR&Bだけでなく、先鋭的なダンスビートなど多用な音楽ジャンルを取り込んだスタイルは独特だ。特徴的な歌声もあり、聴いてすぐに彼だと分かる世界観を持っている。

正直言って、もう少し尖ったステージを期待していた。しかし実際はオープニングから派手な照明と演出で盛りあげる大エンターテインメント、次から次へと歌われるヒット曲、その圧倒的な迫力に最初は戸惑ってしまった。ただショーが続くうちにエンターテイナーとしてのパワーに引き込まれていった。とにかくボーカリストとしての力が素晴らしい。じっくり聴かせる曲から盛り上がるダンスナンバーまで見事な表現力で歌いあげる。最終的には歌の力が全てだ、とでも言うような堂々のパフォーマンスだった。

先日、カリードのステージでも同じ感想を持った。ウィークエンドと共に新しいR&Bの動きを代表するスター。彼のステージもCD音源とは少し違う派手なエンターテインメントだった。そこで主張されていたのは同じように歌の力だ。共通するのは今の時代においてライヴはライヴとして自立した価値と肉体性が強く求められていること。オープニング・アクトに米津玄師が出たことを含め、時代の今が感じられたライヴだった。
12月18日、幕張メッセ。

(2019年1月9日 日本経済新聞夕刊掲載)
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