このバンドには定番のコール・アンド・レスポンス、呼び掛けがある。それはバンドが「3度の飯より」と叫ぶと、客が「飯が好き」と答えるというものだ。これだけ聞くとコミック・バンドにしか思えない。確かに女性ドラマーのナヲちゃんのMC(しゃべり)は、現存する日本のロック・バンドの中で一番面白いし達者である。それはバンドの大きな魅力にもなっているし、本質的な事だ。つまり、このバンドにはロックそのものさえ笑ってしまう批評性と過激さがあるという事なのだ。
デビュー当初は、MCの面白さや、あえてB級なイメージを強調する戦略によって、どこかキワモノバンド的な見られ方をしていたが、徐々に周りもこのバンドの本当の姿に気付き始めた。このバンドの本当の姿とは、過激な前衛性と批評性を持ちながら、圧倒的な大衆性まで獲得した、高い音楽性と演奏技術を誇る画期的なへヴィー・ロック・バンドというものだ。
今回のツアーは最新シングル『爪爪爪』発表にともなうものだ。このシングル・タイトルは変である。子供でも笑ってくれるユーモアがある。しかし、そこに留まらない無気味さと文学性もある。現代詩のタイトルにもなりそうだ。そして視覚的にも強いインパクトがある。言うまでもなく全て計算されたものだ。そしてそのシングルはチャートの二位になった。凄い事だ。この日のライヴも、二千五百人定員のところに六万人の申し込みがあったらしい。当然、客の温度は高く熱いライヴになった。いつものように一時間強の演奏ではあったが、密度の高いパフォーマンスに客は満足していた。
2008年7月16日 新木場STUDIO COAST
(2008年7月28日 日本経済新聞夕刊掲載)
日経ライブレポート「マキシマム ザ ホルモン」
2008.08.05 18:36