あまり聞き慣れない言葉かも知れないが、簡単に言えば「その時に自分が感じた感覚や感情が全て」、という表現のあり方のことだ。
感情をぶちまけるバンドは数多くいるし、独自の感覚で世界を描くバンドも数多くいる。
だけど、リリシズムを湛えたバンドは今の若手の中には数少ない。
「悲しい」を「悲しい」と表現していてもリリシズムは生まれない。
「楽しい」を「楽しい」と表現していてもリリシズムは生まれない。
「悲しい」と歌っても「楽しい」と歌っても、どちらも聴き手の中の同じ「エモーションの核」に触れるような、そういう表現がリリカルな表現、つまりリリシズムを湛えた表現なのだ。
汚いことを歌っても、美しい。
取るに足りないことを歌っても愛おしい。
嫌いだ、と歌っても愛にあふれている。
好きだ、と歌っても憎しみが滲んでいる。
そういう表現が、リリカルな表現である。
忌野清志郎は、リリカルな表現の天才だった。
きのう観たクリープハイプのライブについて、もう全て言えた気がする。
まだツアーが残っているからどうせディテールは書けないので、
僕が書くべきなのはこのことだけな気がする。