星野源を東京ドームで観た

星野源のライブはいつも、ずっとオンでもあるようなずっとオフでもあるような、不思議な時間が流れる。
何気ない普段の会話の流れの先に美しくて濃密なコミュニケーション空間が生まれたり、逆に細密に組まれた演出から生まれたものがすっからかんの無意味だったり、なんだか不思議で、それが心地良い。
ステージの上の星野源も、オンなんだかオフなんだか。
いや彼は、オンでもありオフでもある境地を、すごい集中力でキープしたままステージに立っているのだと思います。

音楽もそう。
彼がたった一人で部屋の中でオフの状態で作った歌が、それがそのまま何万人もいる大会場で歌われるとき、内面的なオフの囁きにも聴こえるし、外に向かって放たれるオンのポップにも聴こえる。ひとつの歌がどちらの表情にも見える。

ライブが始まってから終わるまで、星野源はそのオンとオフのメビウスの輪をずっと歩き続けて、一度も足を踏み外さない。お客さんは心地良い不思議な境地の中で宙ぶらりんにされる。
それが5万人のドームでも見事に起きたのはすごいことだと思った。(山崎洋一郎)
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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