白石一文の新作は純恋愛小説。
変な喩えで申し訳ないが(そして若い人にはわかりにくい喩えで申し訳ないが)、ピンク・フロイドの「IF…」やキング・クリムゾンの「風に語りて」みたいな作品だ。
壮大なプログレッシブ・ロック・バンドが歌う恋愛や半径1mのシンプルな真実。
白石は恋愛の心理の捉え方が甘いと、特に女性読者から指摘されることが多いが、これは少なくとも甘さはない。
得意の「論理」を敢えて控えて、「匂い」や「セックス」を作品の核にし、それでもなお白石は本質へと切り込んでいる。
やはりこの作家からは目が離せない。