僕の中では周囲の静かな前評判をぜんぜん凌ぐ出来で、100分間がすぐに過ぎてしまった。
濃いのに淡い、カラフルなのに虚無的で、乾いているのに膿んでいる、そんな独特の空間と物語。そしてそれをサッと忘れ去るような暴力性。好きな世界だった。
以前、Avyssという新しい音楽プラットフォームに関わらせてもらったときに、そこに参加するアーティストたちから「内面に00年代、10年代の残像を抱きながら20年代という外面を生きている」今の新・大人の感覚が感じられたのだが、この芝居にもその感覚を強烈に感じた。
その閉塞感を後にして前に進むためにビートルズとクラッシュの曲が使われていたその投げやり感が刺さった。つまり、なんだっていい/なんにもない、というロックに対する諦めと憧れのリアルな距離感だ。
作・演出の菊地穂波はとても才能があると思う。(山崎洋一郎)