小沢健二のライブについて


小沢健二が泣いた。
岡崎京子がここにきている、と言って、突然にステージの上で泣いた。
ライブの最後の出来事で、ファンはみんな驚いたはずだ。
僕も呆気にとられるほど驚いた。
小沢健二は泣かないアーティストだったからだ。

今回の、13年ぶりのライブで、本質的な変化が感じられたのはその一瞬だけだった。

最も本質的な音楽は大衆音楽であるというブレない思想。
ニューヨークの大停電の夜と何でもない日常の暗闇と中野サンプラザの暗い客席を「人々が直に繋がっている」という皮膚感覚によって同じだと言い切る観念の力。
音楽は人と人を分かつ、ということを知り尽くしているからこその、異常な多幸感の放出。

昔と何も変わっていない。
小沢はブレない。
ブレる必要がない、希有なキャリアの持ち主。

だからこそ、誰にも見せたことのない泣き顔をステージで見せたことに、
桁違いの感動を僕は覚えた。

素晴らしいステージだった。
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